「大屋根リング」はどうなるのか

一方、2025年大阪・関西万博に目を向けると、新たなシンボルとして計画された「リング」は、一部を除き完成後に撤去される運命にある。(日本国際博覧会協会は6月にも方針を決めると発表している)

円周2キロ、高さ最大20メートルの世界最大級の木造建築物であるリングは、会場を環状に囲み、「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を具現化した先進的な試みだ。

下部は来場者の動線となり、上部からは会場全体や大阪湾を一望できる構造だが、当初の計画では全面撤去が基本路線だった。

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建設費用が350億円にのぼるリングは、「世界一高い日傘」と批判されるなど、国会でも論争の的となった。こうした批判を受け、吉村洋文大阪府知事は「圧倒的な存在感がある。来場者が目にすれば現地で残したいという意見が出てくるだろう」と述べ、一部現地保存への転換を支持した。

万博協会は2024年1月に活用方法を公募し、「庁舎の門衛所」「高速道路の料金ゲート」「公園と駅をつなぐ歩行者デッキ」などの提案が寄せられたが、基本的にはリングの大部分は撤去され、一部のみが保存される見通しだ。

なぜ今回の万博は盛り上がっていないのか

太陽の塔も世間からの批判を受けての妥協策としての保存だったが、リングは現時点ですでに大半は撤去予定のため、太陽の塔のように完全な形で後世に伝わる「レガシー」になる可能性は極めて小さい。

万博といえば1889年のパリ万博のために建設されたエッフェル塔も当初は批判を浴びたが、今や世界的な観光名所として愛され、2024年のパリ五輪でも開会式のフィナーレを飾った。万博の建造物は「一過性の演出」と捉えると物議をかもすが、「物語の継承」と捉えられれば歴史的建造物にもなりうる。

万博という巨大イベントを今の時代にどうとらえるべきなのかを私たちはもっと議論すべきではなかったのではないだろうか。

2025年の大阪・関西万博の前評判は決して高くない。「いまさら万博かよ」「万博は新しい時代の始まりというが、日本の終わりの始まりではないの?」という皮肉すら聞こえてくる。