――面白いですね。

緒方 面白いですね。それはどこかで調べてきたんでしょうね。それで取り入れたと思うんですけど。その辺がうまく表現できない少年というのにはまったのかもしれません。

――主人公は緒方さんと同年代設定ですか?

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緒方 いや、僕より上ですね。そういうふうにしてます。

©藍河兼一

ひとつ上の世代が熱狂した学生運動とは何だったのか

――そもそも学生運動を描きたいと思ったのはどうしてですか?

緒方 僕は中学が長崎大学教育学部付属中学というところなんです。小学校の時から受験しているんですけれども。大学のすぐ横に中学校があるんです。72年にあさま山荘事件が起こっているんですけれども、いわゆるスチューデントパワーみたいなことで、60年代から70年代、世の中をにぎわしている頃って、僕は小学校高学年ぐらいなんです。その頃にデモとか見るんですよ。大学が近いから。若者たちがやっていて、当然その上の親の世代、あるいは教師の世代は、「バカなことをやって」と言う。これはバカなことなのか正しいことなのかが分からない。でも、なんか皆さん楽しそうだと。フォークソングでは岡林信康さんとか、そういう歌もいっぱいあって、ムーブメントになりましたから。それが思春期。青春期じゃなくてね。青春期の人たちはそれを実際にやっているわけじゃないですか。それは団塊の世代だと思うけど、思春期にそれを見たというのが、自分の中では大きいですね。だから70年代、中学生ぐらいの時に出会った映画、僕の場合はスピルバーグだったし、それから音楽、それから文学なんかも含めて、時代のにおいみたいなもの。あれは何だったんだろうというのをね。肯定も否定もできない自分を探ってみたいと思ったんでしょうね。

――先ほど楽しそうに見えたとおっしゃいましたけど、何となく分かります。あれは何だったんだろうなとずっと思っているんですね。

緒方 いろいろ調べたり、そういう人たちに会って取材したりしていく中で、時代の麻疹みたいなものだったのかなと今は思うようになりましたけれども。