真山仁さんの「冨永検事シリーズ」最新作は舞台を沖縄地検に異動した冨永が、那覇市で発生した殺人事件と自衛隊の最新鋭戦闘機の墜落事件の謎に迫ります。貧困、基地、軍用地主などなど沖縄の暗部を抉り出した問題作です。
著者と同じく元新聞記者の青木千恵さんが本作、並びに「冨永検事シリーズ」の魅力に迫ります!
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今から八〇年前の一九四五(昭和二〇)年に敗戦国となった日本は、焼け跡から復興し、高度経済成長を経て先進国と言われるようになった。八〇年代以降、他の先進国が不況と先進国病に喘ぐ中でも成長を続け、家電や自動車、半導体といった日本の製品群は、斬新な技術と品質の良さで世界市場を席巻、九〇年頃までの日本は「経済大国」「科学技術立国」「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われた。しかし、九一年にバブル経済が崩壊したあとは苦戦している。世界に占める日本の名目GDPの比率はじりじりと下がり、二〇〇五年は一〇・一%を占めて世界二位だったが、一〇年に中国に、二三年にドイツに抜かれて、今はアメリカ、中国、ドイツに次ぐ四位となっている。
どうしてこうなった? 世界にとって掛け替えのない存在として、日本が再生する道はどこにあるのだろうか?
本書は、気鋭の検察官、冨永真一を主人公にした、「冨永検事シリーズ」の第三作目となる長編小説だ。一作目『売国』(「週刊文春」二〇一三年五月二・九日号~一四年八月七日号初出、単行本は一四年一〇月刊)、二作目『標的』(「産経新聞」一六年七月~一七年三月初出、単行本は一七年六月刊)に続く本書は、「オール讀物」二〇年二月号~二一年一二月号で連載後、沖縄の本土復帰五〇年にあたる二二年の六月に単行本が刊行された。今回の文庫化で、シリーズ三作が揃って文春文庫にて読めることになる。本書から読んでも楽しめるが、一、二作目もぜひ読むことをお勧めする。とても面白いから。
