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単なる“脱・清純派”ではない
ただ、筆者は『ネムルバカ』が平祐奈の転機であるものの、決して“清純派からの逸脱”ではなく、俳優としての新たな地平を切り開くきっかけに過ぎないと考えている。
平祐奈は、これまでのイメージを捨てるのではなく、それに新たな解釈や次元を与えようとしている。元来持っていた無垢さや真面目さ、丁寧な芝居といった“素地”を生かしながら、これまで演じてこなかった性格や葛藤を身につけていく――これは「転身」ではなく「拡張」だ。
例えば、『ネムルバカ』の鯨井ルカが持つ“未完成さ”や“もどかしさ”は、平がこれまで演じてきたキャラクターが持つ“純粋さ”と地続きであるともいえる。彼女が演じた鯨井ルカは、ただの破天荒なバンドマンではない。繊細で、情熱的で、不器用で、それでも誰かにとって特別であろうとする、そんな人間味があるからこそ、映画の高評価にもつながっている。
映画公開に前後して、平祐奈の活動はさらなる幅を見せている。NHK連続テレビ小説『おむすび』では、関西弁で演技して存在感を示した。4月から始まるドラマ『あなたを奪ったその日から』では、父や年齢の離れた妹と暮らし、どこか“闇”を抱えたキャラクターを演じる。
