地元の花火大会の夜、ミユキは青山に呼び出され、午後10時過ぎまで付き合わされた。娘の帰りが遅いのを心配した母親が電話すると、「男の人と一緒にいる」と返事が返ってきた。母親はてっきり同世代の男友達と一緒にいると思い込み、「一緒に連れて帰りなさい」と叱りつけた。
ところが、家に現れたのは圧倒的な年齢差がある中年男で、ミユキの母親は仰天した。だらしない服装で、腕には入れ墨があり、無数の根性焼きもあった。
「娘は高校生だぞ」
父親である熊野とも対面し、熊野は1カ月ほど前に自分の自動車整備工場に訪ねてきた男だと気付いた。
「キミはいくつなんだ?」
「38です」
「仕事は?」
「無職です」
「結婚はしているのか?」
「していません」
「娘はまだ高校生だぞ」
「娘さんとは真剣に交際しています。本当に愛しているんです」
ミユキはその横で何も言わず、うなずいているだけだった。動揺した両親は、とりあえずその日は青山の連絡先だけを聞いて、すぐに帰らせ、ミユキを問いただした。
「どこで知り合ったんだ?」
「半年ほど前に、携帯電話のゲームサイトで……」
「彼のどこが好きで付き合っているんだ?」
「……」
「肉体関係はあるのか?」
「……ない」
ミユキはそれ以上、何も話さなかった。熊野は「とにかく年齢差がありすぎる。青山との交際は反対だ」と説得したが、ミユキは押し黙るばかりだった。
翌日、熊野はミユキの祖父にあたる実家の父親を訪ね、昨夜の出来事を話した。
「よりによって、何であんな男と……。ミユキはたぶらかされているとしか思えない」
「それならミユキを連れて警察の生活安全課へ相談に行けばいい。青山は後からワシが警察に連れて行こう」
