誰が描いたのかな、と思いながらエンドロールを見ていると、「アニメーション:萬田翠」とクレジットされている。あれ? 先生と同じ名字だぞ。名前の「みどり」も先生の「緑平」という名前の1字と共通している。これはもしかして……と思って調べたら、やはり娘さんだった。広告制作やイラストレーターとして活躍し、先生の著書のカバーイラストも担当したのだとか。お父さん、幸せ者ですねぇ。

©まほろばスタジオ

幸せの奥深さを気づかせてくれる

 登場する患者さんたちも幸せそうだが、がんが消えるわけではなく、いつかは終わりが来る。周りで囲む家族は別れを惜しみ涙を流すが、本人はにこやかな表情を見せる。着物の着付けを教えていた女性は、亡くなる前日もマニキュアとメイクを欠かさない。それまで妻への感謝を口にしなかった男性は、間際に「ありがとう」と語りかけた。最期に最高のプレゼントだ。ところが、冒頭で先生に「欲張りだねぇ」と言われた男性は、別れのシーンが出てこない。ということは……、本当に“欲張って”長生きしているんだな。

 前回この連載で米歌手シンディ・ローパーの映画を取り上げた際、彼女の人生を「自分らしく生きる」と書いた。今回の映画は「自分らしく死ぬ」ことを描いている。自分で自分の死をプロデュースし、演出できる。それを助けるのが在宅緩和ケアなのだろう。だから患者さんはみな穏やかな顔をしている。自分らしく生きて最期を迎えたから。でも、そうはできない人が多いのでは? そして私自身は? 幸せの奥深さに気づかせてくれる作品だ。

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ハッピー☆エンド
監督:オオタヴィン/出演:萬田緑平(在宅緩和ケア医)、樹木希林/ナレーション:佐藤浩市、室井滋/エンディングテーマ:ウルフルズ「笑えれば V」/2025/日本/85分/制作:まほろばスタジオ/配給:新日本映画社/©まほろばスタジオ/公開中

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