1987年11月29日、北朝鮮の工作員によって大韓航空所属の旅客機が飛行中に爆破されるテロ事件が発生した。いわゆる大韓航空機爆破事件である。容疑者のひとりは日本国の旅券を持つ「蜂谷真由美」を名乗ったが、彼女こそ北朝鮮の工作員であり、本名は金賢姫(キム・ヒョンヒ)といった。
背乗りで日本人になりすましていたのである。この金賢姫に日本人化教育を施したのが、日本から拉致された李恩恵(リ・ウネ)という女性であった。
金賢姫が日本人化教育を受けたのは1981年7月から1983年3月の期間とされる。石川さんが失踪した時期とも近く、李恩恵と石川さんが同一人物ではないかとの疑念も生じた。
のちの1991年5月16日、埼玉県警は李恩恵の正体が、北朝鮮による拉致被害者の田口八重子さんであることを確認した。李恩恵と石川さんは同一人物ではなかったものの、田口さんが東京で失踪したのは1978年6月。石川さんとは、わずか2カ月と差がない。
北朝鮮が明らかにした拉致被害者の中に石川さんの名前はなく…
また、石川さんが失踪直前に東ヨーロッパに旅行していたことも、北朝鮮による拉致の可能性を感じさせた。当時はまだ東西冷戦のさなかであり、東側を体験した希少な日本人として狙われてしまったのではないか。そのような憶測が生まれるのもおかしくない時代だった。彼女は北朝鮮に連れ去られ、田口さんと同じような境遇にあるのかもしれない。
やがて石川さんの家族は、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者、いわゆる「特定失踪者」を調査する特定失踪者問題調査会に届け出た。
そして、2002年9月17日、小泉純一郎首相が歴代首相として初めて訪朝し、金正日総書記と首脳会談を行った。このとき金総書記は国家の関与を公式に認めて謝罪し、拉致被害者の数名が日本に帰国することになった。
このとき日本側が把握していない拉致被害者の存在も明らかになったものの、そこに石川さんの名はなかった。石川さんの行方は一向にわからず、ただ時間だけが過ぎていく。
石川さん失踪は、まったく手がかりのない未解決事件だった。
しかし、事件発生から26年後、思わぬ展開を迎えることになる。

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