2/4ページ目
この記事を1ページ目から読む
覚醒剤中毒の女性は、母親だった
一目見て覚醒剤中毒だとわかった。女性は通り過ぎようとしたが、ふと未知の前で立ち止まった。顔を覗き込んで来たかと思うと、呂律の回らない声で言った。
「あんたさー、さっきダチに『ミチ』って呼ばれてたよなー」
「だったら、なんだよ」と未知は答えた。
「もしかして、あんたの親父って住吉会の敏夫?」
稲川会のマンションで、住吉会の名を出されたので血の気が引いた。未知は言った。
「あんた誰なんだよ」
「うちが先に訊いたんだから、まずそっちから答えるのが筋だろ!」
「答えてやるよ。敏夫は私の親父だよ。それが何だ」
女性はニヤリと笑った。
「そっか。敏夫、元気か?」
「知るか。もうあの家は出たんだ。大体、あんた誰よ」
「うち? あんたの母親だよ」
「は?」
「あんたの母親だっつってんだろ! 紹子つうの。敏夫から何も聞いてねえの?」