「父さんも母さんも、完全なジャンキーでした」
横浜に引っ越して以来、日に日に母親の友理の言動がおかしくなり、やがて何を言っているのかわからなくなるほどの状態になったのだ。1日中部屋に閉じこもって顔を見せないこともあり、数日ぶりに会うと別人のように痩せこけている。突如、発狂したように髪を振り乱して叫んで暴れることもあった。
最初、晴子は友理が病気なのだろうと思っていたが、部屋に転がっている注射器を見つけて覚醒剤を使用していることを知る。実は、父親の竜司は横浜では覚醒剤の元締めとして有名な人物だったのだ。
竜司は自分でも覚醒剤をセックスの際に使用しており、妻に注射を打っては愛欲に溺れていた。友理はそんなふうに毎日覚醒剤を使用しているうちに、後遺症が現れたのだろう。
晴子の言葉である。
「父さんも母さんも、完全なジャンキーでした。極力私の前ではやらないようにしていたけど、途中からは隠すこともできなくなった。朝から2人して部屋に閉じこもって注射を打っては何時間もセックスするの。偶然私がドアを開けて見ちゃったこともあった。そしたら、お父さんから5000円わたされて『これで外で遊んでろ』って言われて追い出された。
いろいろあったけど衝撃的だったのが、学校から帰ったら、母さんが廊下で失禁して倒れてたことですね。メッチャ打ったんだと思う。父さんに『ママやばいよ、死んじゃうかも!』って泣きついたのに、『放っておけ』って突き放された。病院へ連れて行ったら、自分まで捕まっちゃうと思ってたんじゃないかな。自分の嫁なのに、結局はその程度にしか思ってないんですよ」