ニューヨークに突如、現れた連続殺人犯。6人を殺害、被害者の中には生活に支障をきたすほどの重症を負った人も…。この残虐な犯行に及んだ「悪魔のような男」とは? 事件の詳細を、実際に起きた事件や事故などを題材とした映画の元ネタを解説する新刊『映画になった恐怖の実話Ⅳ』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)

写真はイメージ ©getty

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駐車違反切符をむしり取った不審な男

 1977年6月26日午前3時ごろ、整備士助手のサルバトーレ・ルポ(同20歳)と恋人女性のジュディ・プラシド(同17歳)が、クイーンズのディスコを出た後、車内でサムの息子について語り合っていた。そのとき、3発の銃弾が撃ち込まれる。

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 サルバトーレは右腕、ジュディは右こめかみ、肩、首の後ろに被弾するが、奇跡的に命に別状なし。このとき、2人の目撃者がレジャースーツを着た背の高い黒髪の男が現場から逃走するのを見ていた。やがて、最初の犠牲者が出た7月29日が近づいてきた。映画はこの辺りから始まり、劇中でも描かれるとおり警察は1年目のこの日、サムの息子が犯行に打って出ると確信していた。

 が、その読みは外れ、最後となる事件が起きるのは2日後の31日早朝。秘書のステイシー・モスコウィッツ(同20歳)と衣料品販売員のロバート・ビオランテ(同20歳)がブルックリンの駐車場に停めた車の中でキスを交わそうとしていたとき、男が近づいてきて4発の銃弾を撃ち込んだ。2人とも頭部に被弾し、ステイシーは死亡(犠牲となった女性で唯一の金髪だった)、ロバートは左目を失う大怪我を負う。

 この事件の3日後、現場付近に住む女性が不審人物についてニューヨーク市警に届け出る。事件当日、彼女はボーイフレンドとデートを終え、自宅アパート前に停めた車の中で談笑していた。すると1人の男が消火栓脇に停めてある車に近づき、フロントガラスから駐車違反切符をむしり取った。帰宅後、犬の散歩に出かけた彼女は、先ほどの駐車違反者とよく似た男を目撃する。右手に何か「黒いもの」を持っているのを見て、その直後にすぐ近くで銃声を聞いたという。ステイシーとロバートが撃たれた現場である。