殺人前にニューヨーク市内で放火488件

 バーコウィッツは1953年、ニューヨーク・ブルックリンで私生児として生まれた。ほどなく養子に出されたが、新しい親とは馴染めず窃盗や放火などを犯すように。

 14歳のときに義母が死に、義父が再婚すると家庭とは疎遠になった。1971年に高校卒業後、アメリカ陸軍に入隊し、射撃能力の高さを買われベトナム戦争に駆り出されそうになるも、これを拒否し韓国に従軍。童貞を捨てた韓国人売春婦から性病をうつされる。ちなみに、彼の性体験はこの一度きりだ。

 除隊になった翌年の1975年に実母の居所を突き止め訪ねたが、冷たくあしらわれ、以後、女性という存在に激しい憎悪を持つ。継続的に放火を行うようになるのもこのころからで、約1年の間にニューヨーク市内で488件もの火事を起こす。バーコウィッツはその1件1件を日記に綴っていた。

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 タクシー運転手など様々な仕事に就いた後、1975年秋に米国郵便公社の郵便物仕分け係に。同年12月24日のクリスマスイヴ、狩猟用ナイフで若い女性に危害を加えるべくターゲットを探し回り、ヒスパニック系の女性と、15歳の女子高生を襲撃。しかし、嫌疑を向けられることはなく、その後、ヨンカーズのアパートに転居する。

 隣の敷地に住む大家の飼い犬の鳴き声がうるさく、ノイローゼに。3ヶ月後、ヨンカーズ内の別のアパートに引っ越すも、そこでもまた隣人のサム・カーという男性が、黒いラブラドールを飼っており、やがて彼は、その犬に齢3000歳の悪魔が取り憑き自分に殺人を命じているとの妄想を抱くようになる。劇中でも犬を前に怯え震えるバーコウィッツの幻覚が描かれているが、その衝動のまま彼は44口径の銃を買い求め残虐な犯行に打って出る。

真ん中の男が6人を殺害したバーコウィッツ ©getty

 逮捕後の取り調べで、彼は全ての殺人・傷害を認めながらも、改めて隣人の犬に憑依した悪魔に脅されたことが動機であると主張した。が、取り調べを担当したFBI特別捜査官ロバート・K・レスラー(1937‒2013)の厳しい追及に、悪魔憑依の話は精神異常者を装うための嘘であると供述を撤回。母親に対する怒りと、女性と好ましい関係を築けないことへの苛立ちが殺人の本当の動機であると告白した。

 1978年6月12日、判決で終身刑を宣告され(ニューヨーク州は1976年に死刑を廃止)、刑務所へ収監。2025年2月現在は同州アルスター郡のショーンガンク矯正施設に投獄されている。

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