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どこからともなく現れる薄紫色の小さな生物
24時が過ぎて周りがざわつき始める。ホタルイカの身投げが始まったようだ。平等にホタルイカが接岸するわけではなく、立ち位置によってムラがあるみたいだ。移動しようにもすでに自身の後ろにも人が重なるほど密集しており移動しても最前列は確保できない。
海面にライトを当ててホタルイカを探しているとどこからともなく薄紫色をした物体が漂ってきた。網ですくうと紛れもなくホタルイカだ。ついにボイルされていない、醤油にも浸っていない生のホタルイカを手にした。
触腕は青白く光り、手のひらの上でバタつく様子はまるでヲタ芸を見ているようだ。
遠い深海から役目をはたして流れついたのかと思うと感慨深い。ほどなくして表層に限らず海底付近にもホタルイカが流れてくる。お隣さんとは暗黙の了解で先に見つけた方がすくうローカルルールがあり、殺伐とした雰囲気もなく楽しく、身投げを楽しむことができた。
大規模な群れは訪れなかったが、1匹ずつすくっていくと、朝方には50匹ほど確保することができた。初参戦にしては上出来だろう。
体力は底をついていたが、現地で採取したら必ずやりたかったことの一つ、超新鮮なホタルイカのボイルをその場でいただくことに。


