「あなたを愛してるかわからない。それでも離婚はしない」
6月。肺がん闘病中の父親が亡くなった。73歳だった。
その約3ヶ月後の9月。前編の冒頭の出来事が起こる。
久々に夫から離婚を切り出されるが、碧子さんは拒絶。
何とか持ち直すも、2021年1月、夫の様子がおかしい。
よそよそしい対応を続ける夫に、苛立った碧子さんは感情を爆発させてしまった。
「私、何も悪いことしてないのに、何でこんなに塩対応されなきゃいけないの?」
すると夫は申し訳なさそうに言った。
「今すぐ離婚したいとかじゃない。ただ、このまま夫婦生活を続けるのに違和感があった。こういう話をしようとするとすぐに離婚の話になるし、もめるのが嫌だから黙ることしかできなかった。俺は、たまには俺の気持ちを聞いて欲しいだけなんだ!」
しかし碧子さんは収まらず、怒り心頭に達する。
「気持ちって、ここまできて離婚なんてマジあり得ないから! こんなところでつまずいてどうすんだよ? さっさと心決めて夫婦として再起動するんだよ!」
すっかり戦闘態勢の碧子さんに対し、夫は冷静に努めていた。
「離婚するもしないも抜きにして、俺はただ今後のことを、2人できちんと話をしていけるようになりたいんだよ」
最初に別居してから約2年半、碧子さんは離婚危機に慄き続け、日常生活を脅かされるほどに苦悩させられてきたトラウマから、夫から久しぶりに発せられた「離婚」という言葉に過剰反応してしまったのだ。
「ここまで夫婦として修復してこれたのに、まだ離婚なんて言ってるの?!」
冷静に努めているように見える夫も、碧子さんの置かれている状況や気持ちまでは理解できていなかったのかもしれない。お互いがひたすら自分の要望を繰り返し、会話が噛み合わない。
「碧子が『絶対離婚しない』という度に俺の気持ちが置いていかれているみたいで辛くなる。離婚したいとかしたくないとかそういうんじゃなくて、たまには俺の話を聞いて欲しい!」
何度も「離婚」という言葉を口にする夫に、碧子さんは泣き叫んだ。
「あなたを愛してるかわからない。それでも離婚はしない。それが私の価値観なの! 私は私の価値観を信じて生きていくの!」
2人は日付が変わるまで口論をし続けた。