夫に「ゴミを出しておいて」と言うと、夫は「ゴミ出し」はやってくれるが、その前段階の、家中のゴミを集めることや、その後の、ゴミ箱にゴミ袋をセットすることはやってくれなかった。

「家事は“点”で終わりではなく、“流れる”作業です。その上、“お願い”はその1回限りしか効果がなく、翌日や翌週にはしてくれませんでした。なので、私は優しく“お願い”することに疲れ、次第に“注意”になっていきました。さらに、夫は忘れっぽくて、“お願い”しても『後でやる』と言ってやらないことがほとんどでした。だから私は“お願い”も“注意”もしなくなり、ただ私の家事負担が増え、ストレスを溜めていきました」

 満たされない碧子さんは、仕事やお酒にのめり込んでいった。

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写真はイメージ ©AFLO

 毎日21~22時頃まで働き、帰宅後は必ずお酒に手を伸ばした。外で飲んでから帰宅することも多く、帰宅しても玄関やキッチンで倒れ込むように朝まで寝ていることも珍しくなかった。

「私にとって夫は、自慢できる存在でもありました。まだ結婚して2年。家族や友人には幸せエピソードばかり話していたので、夫の評価が下がるような恥ずかしい話をしたくないという気持ちもあり、誰にも相談できずにいました。余計な心配をかけたり、誤解を与えたりしたくなかったのです。また、夫とのことを“悩み”として打ち明けると、自分の中で“悩み”として可視化されてしまうようで、無意識に避けていたのかもしれません」

 しかし夫が出て行ってしまい、さすがに自分一人で抱えきれなくなった碧子さんは、友だちや妹に相談するようになっていった。

最良の妻となるチャンス

 2019年1月。不眠や食欲不振に悩んでいた碧子さんは、心療内科に通い始めるとともに、カウンセリングを受けてみることにした。

「別居当初は心の中がグチャグチャで、怒りと悲しみが心のほとんどをしめていました。カウンセリングでは、自分と向き合い、自分は本当はどうしたかったのか、どう夫に向き合って欲しかったのかを紐解いていきました。すると、夫との関係が崩れるまで私は “怒り” でしか自分の気持ちを表現することができませんでしたが、夫の気持ちを受け止めつつ、自分の思いも伝えていく……という方法を学び、少しずつ実践していけるようになりました」

 3月から5月。碧子さんの、「夫の気持ちを受け止めつつ、自分の思いも伝えていく」というコミュニケーション方法が功を奏したのか、会うたびに夫の態度が和らいできた。

 しかし6月。「今だ!」とばかりに心からの謝罪をし始めた碧子さんに対し、夫は「来月会ったときに離婚に同意しない場合は離婚調停だ!」と激しく怒り、拒絶。