もちろん駅前広場から周囲を見渡しても、目立つのは物流関係の事業所など。だから空港の隣接地という性質はまったく変わらない。

 それでも、少し駅前から離れたところまで歩けば一戸建ての大きな住宅がいくつか並ぶ一角があって、その奥には田園地帯が広がっている。芝山千代田駅からものの数分、ときおり上空に飛行機が飛ぶくらいなもので、のどかなものだ。まだ空港がなかった頃のこの一帯は、どこを見渡してもこうした里山だったのだろう。

 

人口約6500人の小さな町の“里山だった頃”

 芝山町は、下総台地の真ん中に広がる人口約6500人の小さな町だ。町の中心は芝山千代田駅から離れた南のはずれ。古代には墳墓が多く築かれ、埴輪がたくさん発掘したことから「はにわの町」などと謳っている。

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 また、芝山仁王尊の門前町という一面もあって、成田山新勝寺に伍するほどの参拝者を集めていたこともあるという。ただ、基本的には周辺一帯と同じく丘陵地に広がる農村で、いまでもスイカなどの生産が盛んなのだとか。

 そうした町に隣接するように成田空港ができたのが、1978年のことだ。そうした事情からいまでは工業団地なども形成されている。

 また空港南端の隣接地には航空科学博物館もある。飛行機のしくみやら歴史やらを学べ、シミュレーターの体験もできる博物館。芝山千代田駅から歩いて30分ほどだが、だいたいの人はクルマで行くようだ。

 

 つまり、芝山千代田駅は実に空港らしい光景と、それとは正反対の昔からあった里山風景が混然としてせめぎ合う、そういう中にある駅なのである。

 ちなみに、芝山千代田駅から空港のA滑走路を挟んだ西側には、成田市の「三里塚」と呼ばれる地域がある。三里塚、古くは下総御料牧場が現在の空港敷地内にかけて広がっていた。