蓮實 そこで万田(邦敏)さんを紹介しました。すると、万田さんが実際にソウルに行かれたのですが、結構人が入っていたとのこと。2024年の韓国で1970年代の日本の学生たちが撮った8ミリ映画が上映される。素晴らしいことでは、ありませんか。上映後の討論も非常に充実したものだったというご報告を受けましたから、やっぱり「パロディアス・ユニティ」の若いあの人たちがやっていることは、飛びぬけていたんだと思います。
――僕が現役の頃に黒沢さんと万田さんはもうOBだったんですけど、僕ら後輩の8ミリを全部見て評論してくれたんですよ。それが何より励みになったと思います。
蓮實 環境として、これ以上ない状況ではないですか。
――最後まで残っている学生たちの中には、単位は関係なく4年間ずっと先生の授業を受けている人も多くいました。
蓮實 早稲田からも越境入学をして聞きに来ていた方がおり、それが是枝裕和監督だったと後に知りましたけれど……。
――毎週この映画を観てこいと言われて、その映画の話を濃い内容で聞けるというすごく恵まれた環境だったと思います。
蓮實 あの頃、わたくしは1日3本か4本は平気で観てましたからね。大学で授業をしながら。
映画によって選ばれなければならない
――先生は最近の自主映画はご覧になりますか?
蓮實 足腰がめっきり弱まり、もうほとんど映画館には行けない状態です。89歳ですから、仕方のないことですが……。
――昔は8ミリ、16ミリ、35ミリというフィルムの違いがあって、どうしても映画館には8ミリはかけられなかったんですけれども、今、デジタル化が進んで、自主映画でも出来がよければ映画館でもかけられるし、自主映画と商業映画の区別がなくなった状況がありますが、先生はどうご覧になっていますか?
蓮實 それはいいことだと思いますけれども、安易に誰もが映画が撮れるぞと思う状況が瀰漫してきたことは、あまり良いこととは思えません。やはり、映画によって選ばれなきゃいけないと思います。実際、こちらが映画を選んだのだぞと思っている人たちが撮っている映画って、本当にくだらないものが多い。
――昔もエリック・ロメールは8人ぐらいで映画を撮っていたそうですが、その作り方が一般化してきたような気がします。
蓮實 スマホで撮って、映画ができるわけでしょう。だけど、その時本当に何が撮れているか、何が撮られていないかということが重要だと思います。
注釈
1)パロディアス・ユニティ 黒沢清、万田邦敏を中心としてSPPの中で作られた映画製作グループ。
