自分に「待った!」をかける習慣
私たちの心はシーソーのようなもので、気分のいい状態と悪い状態がバランスを取ってゆらいでいます。
精神医学的には、躁状態とうつ状態といいますが、治療が必要なレベルではないにしても、誰しも軽い高揚感や憂うつといった気分のゆらぎを経験しながら生きています。
いつも高揚感と多幸感に満たされて一生を過ごすことができればいいのでしょうが、そうはいかないのが人間の心と脳のシステムです。
大きく高揚したあとには、必ずぐったりと疲れて意欲が出なくなるときがある。それが自然な心のバランスです。
むしろそうして意欲が低下するからこそ、私たちは心と体を休めることができる、と考えるべきでしょう。
しかし、気分の高揚にまかせて物を買ったり捨てたりという、ある意味「あと戻りのできない」行動を取ってしまうことは危険といわざるを得ません。
なかには、
「知人が最近ミニマリストを自称するようになった。SNSにその様子をアップして周囲にアピールしたり、自分にもこんなにいいものだから断捨離をやってみたほうがいいとすすめたりしてくるようになり、どう対応したらいいか迷っていた。
ところがある日突然、連絡が途絶えてしまった。何カ月も返信がないのでさすがに心配になって、その人の親しい友人や親せきにどうしているのかと聞いてみると、うつになって療養生活を送っていた。仕事もやめ、自宅にこもって苦しんでいたことを知った」
というご友人を心配する相談もありました。
高揚した気分にまかせて断捨離とそのアピールに力を使いはたしてしまい、心の不調をきたしてしまったのです。不要な物だけでなく、心のエネルギーまでも断捨離してしまうことは、避けなければなりません。
物を買うときも、捨てるときも、いずれの場合も行動に出る前に、自分自身に「待った!」をかける必要があります。
高揚感にも「句読点」を打つ感覚でひと息入れて、「これ、本当に必要だろうか? もう一度よく考えよう」「捨てるのは、まず半分にしておこう。あと半分は、あらためて検討しよう」などと心のなかで自分に語りかけてあげることが大切です。