断捨離をするときは何に気をつけるべきか。精神科医で禅僧の川野泰周さんは「物を捨てることには高揚感があるため、極端に物を減らし、勢いにまかせて人間関係までもスパッと切り捨てる人がいる。しかしこうした人はミニマリストという言葉を使い、『人と向き合うことをしない選択』をして孤独感を強めているだけだ」という――。
※本稿は、川野泰周『半分、減らす。』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
実は危険な「捨てる快感」
物が増え、「片づけられない人たち」が増えていることを背景に、2000〜2010年代にかけて、「断捨離」が一大ブームとなりました。
この本も、一見そうした断捨離術を紹介する本なので、矛盾するようですが、あえて警鐘を鳴らしたいことがあります。それは、
「断捨離には、いきすぎてしまう危険がある」
ということです。
物を買うときって、ちょっと気持ちが高ぶりますよね。欲しい物が手に入れば、誰だってうれしいもの。
でも実は、物を捨てるときも気持ちが高ぶることを、知っておられるでしょうか?
バンバン物を買うのも、バンバン物を捨てるのも、同じくらい気持ちが盛り上がることがあるのです。
これにはちょっと注意が必要です。
「中道の精神」を尊ぶ仏教的観点に立つと、「高揚感」に引きこまれるようにして行動してしまうことは、たしなめられるべきこととされているのです。
なぜなら、一時の気持ちの盛り上がりにまかせて行なったことは、だいたいあとで悔やむことになってしまうからです。
フリマアプリの普及で加速する過剰消費の連鎖
そのことを私は、日々の診療を通しても実感しています。「買ってから後悔する」あるいは「捨ててから後悔する」ことを繰り返してしまう方が少なくないからです。
なかには「買ってから後悔して売る。売ってお金が入ると、また高揚感が出てきて、本当は必要のない物を買ってしまう。それでまた後悔して、また売って……」ということを繰り返しているという方もおられました。