もちろん、これはもう読まないだろうから誰かにお譲りしたいと思った本は、古本を扱う業者さんに持っていくなどして、適宜処分しています。

本というのは不思議なもので、同じ本でも自分の年齢や置かれた環境によって、まったく違う学びや気づきを得ることができたりします。「感動が新たになる」とでもいう感覚です。

私が4歳か5歳だった幼稚園時代に保育士の先生から読み聞かせをしてもらった本に、絵本作家の五味太郎さんが書かれた『がいこつさん』(文化出版局)という作品があります。

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肉も皮もない、白骨だけのガイコツが主人公という衝撃的な設定なのですが、なんともほのぼのしていて、それでいていろいろな気づきがあるこの本が大好きで、40代になったいまでも大切に読み続けています。

とはいってもしょっちゅう読んでいるわけではなく、2年か3年に一回、忘れたころにふと手にしてめくってみると、毎回そのときの自分自身に照らして、新たな発見があるのです。

もちろんすべての本を読み返していたら時間がいくらあっても足りませんが、ときとしてそんな「自分だけの名作」に出会えれば、読み返すたびに喜びがある。そのことを知っているので、本ばかりは「読んだからポイ」とはできない私です。

川野 泰周(かわの・たいしゅう)
林香寺住職、精神科医
RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長。1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。禅修行の後、2014年臨済宗建長寺派林香寺(横浜市)住職。寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたる。『人生がうまくいく人の自己肯定感』(三笠書房)、『「精神科医の禅僧」が教える 心と身体の正しい休め方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。
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