高校の部活で組織の動かし方を知る

 実人生ではやんちゃな要素とは無縁で、門限を守り、スカートを短くしたこともない、いたって真面目な子だったという。ただ、目立つことは好きで、幼稚園の頃から、学芸会で芝居をやるとなると、舞台の真ん中で誰よりも大きな声でセリフを言っていたらしい。

幼い頃の「寄り目」写真(ファーストサマーウイカのインスタグラムより)

 中学では吹奏楽部、高校では軽音部に入り、気になることがあると先輩にも率直に意見を言うので、ときに周囲から責められることもあった。だが、軽音部で部長になると、副部長にあえてダメっぽい子を2人選んで仕事を振るよう心がけ、この学校で一番のクラブだと言われるべく、朝早くから練習し、学校のため窓締めなども進んで行った結果、部費を増やしてもらえ、大阪の大会で入賞することもできた。この経験から彼女は「あ、組織ってこうやって動かすんだ」と学んだという(『IDOL AND READ 003』シンコーミュージック・エンタテインメント、2015年4月)。

専門学校を中退、アルバイトしながら劇団員として活動

 高校卒業後は、ショービジネスの道に進みたくて、最初は芸術系の大学に入ることも考えたが、高い学費を払ってまで自分の芸術にベットはできないと思い断念。その代わり、親がお年玉や学資保険で貯めてくれていた100万円で、自宅から自転車で通える声優の専門学校に入学する。もともと声優には、子供の時分からゲームが好きで、自分でもゲームにかかわれる仕事がないかと探すうちに興味を持っていた。

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本人インスタグラムより

 しかし、周囲の生徒を見ていると本気で声優を目指しているのかと疑問を覚え、ここにいてもあまり得るものはないと思い、1年で中退する。専門学校に入るのと同じくして、大阪の劇団「レトルト内閣」に入団していた。学校を辞めたあとは、テレホンアポイントなどのバイトをフルタイムでしながら劇団で5年ほど活動する。

劇団所属時代(「劇団レトルト内閣」のX〔2012年7月19日配信〕より)

 だが、ほかの団員は安定した職を持ちながらライフワークとして芝居をしている人ばかりだった。それに対して自分はどうかと「一生バイトをしながら続けるほど、演劇だけが好きか? それでいいのか?」と自問した末、22歳のとき、バイトで貯めた100万円を元手に上京する。ちょうどこのころ、坂本美雨主演の音楽劇『ファンファーレ』(2012年)の出演者オーディションを受け、合格した12人のうち唯一東京以外から選ばれていた。