時は幕末。黒船来航をきっかけに日本のあちこちできな臭い事件が起きていた、勇ましくも暗いイメージがつきまとう時代。しかし、そんな中でもあくまで明るく逞しく、明日へと船を進める男たちがいた。どこに? 日本初の蒸気軍艦「観光丸」の船底に。そこは「ぼっとん」と呼ばれる蒸気機関部。熱く燃えたぎるカマドに石炭をくべ続ける船の原動力である――。

 このたび、レジェンドステージが劇団「カムカムミニキーナ」主宰・松村武さんを作・演出に迎えて上演する『よろしく候~BOTTOM OF HEART~』は、そこで働く若者たちの姿を描いた群像時代劇だ。主人公は、のちの榎本武揚こと旗本子息の榎本釜次郎。EXILEのパフォーマーとして活躍し、現在は俳優の松本利夫さんが演じる。

松本利夫さん(右)、松村武さん(左)

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「名前を聞いたことがある程度にしか知らない人物でしたが、幕末が舞台の芝居は以前にも経験があったので、時代背景はすんなり把握できました。でも今回はアプローチが少し変わっていて、そこが面白さだと感じています」と、松本さん。自身の役については、「釜次郎はこの時代では、いわばエリートです。でも新たな時代に向けて新しい自分を作っていかなくてはと、もがいてもいる。自分は武士だという自負や精神も持ちつつ、この時代の境目をどう進んでいったらいいか。誠実に模索している男なのだと、僕は受け止めています」と語った。