ミュージカル×群像コメディ
本作は2008年に上演された作品を、キャスト、演出などすべてを一新したリメイク版。自身も勝海舟役で出演する松村さんに、今回ならではの工夫や出演者への期待について聞いてみると……。
「松本さんをはじめ、踊りや歌が素敵な方が集まっておられるので、ミュージカルほどではないにしても、ステージ上での人の動きに見応えのある舞台にしたいですね」
物語の冒頭、釜次郎は勝に連れられて、長崎海軍伝習所に停泊する観光丸のぼっとん、もとい「機関部」を訪れる。そして、そこの班長に任じられるのだ。班のメンバーは5人。リーダー格の鍛冶屋の息子・幸吉(小笠原健)、瀬戸の船乗り・参蔵(亀岡孝洋)、オタク気質の弥平(阿部快征)、百姓生まれの大作(松本祐一)、そして人を殺したことがあるとうそぶくトラブルメーカーの小六(今江大地)。この一癖も二癖もありそうな面々と釜次郎が、すれ違いを繰り返しながら、次第にチームになっていくストーリーだ。勢いのある俳優たちの躍動、ハイテンションなセリフの応酬、テンポのいい笑いが目に浮かぶ。そう、何を隠そう、本作はコメディなのである。
「コメディは好きですよ。でも、やるのは難しいんですよね(笑)」と松本さん。「狙ってやればうけるというものじゃないですから。本人は生真面目にやって、それがお客さんにハマるといいなと思ってます。ただ、男同士のわちゃわちゃ感、そこからぶつかり合いを経て出来上がっていく結束感みたいなものは、なんとなく、イメージできているんです」と、これはさすがEXILEといったところだろう。
この若者たち、つまり釜次郎と勝、そして当時の最先端技術である蒸気船の深部を見学に訪れる幕府の要人たち――米大使ハリス、坂本龍馬、徳川慶喜ら以外は架空の人物だ。しかし、「本当に歴史を動かしているのは彼らのような人のはず」と松本さんは言う。
「だって、船底にいる彼らが石炭をくべなければ船は進まないわけですから。ここが動かないと時代は動かない。実際、現代でもそうなんじゃないかと思うんです。政治家のやることにケチをつけてばかりじゃなく、自分たちの力で切り開いていくんだという文字通りの“底力”。そのエネルギーを舞台から届けたいですね」




