続編は前作を超えてこそ

道尾 映画の世界で2(ツー)が1(ワン)を超えることはないという通説がありますけど、それでは意味がない。小説でも続編を出す以上は必ず前作を超えられる確信がなければ書かないので、「DETECTIVE X」も前作を凌ぐ面白さに仕上げて、プレイする人がどんどん増えたらいいな。

加藤 今回僕は、道尾さんというパートナーと、“物語”というパートナーを見つけたと思っているんです。謎解き、閃きというのはある程度パターンに分類できる有限なものですが、物語は無限。謎解きは物語と融合することで広がりを得るし、その器としてゲームほど適した形はないと思っています。ミステリーを読む喜びを内包しつつ、能動的に謎解きに挑む楽しさもある。この融合で今後もどんどん新しいものを作り出せるとワクワクしています。

『いけないⅡ』(文春文庫)

道尾 能動的というのは僕もこの数年考えてきたことで、最初に実践したのが『いけない』でした。書かれた文字をただ読む作業を、どうすれば体験にまで引き上げられるか。『いけないⅡ』を書いたのは、物語に――加藤さんの言うところのパートナーみたいに――写真を組み合わせる形でまだまだ面白いことができると思ったからですし、今は“音”をパートナーとして『きこえる』という本を制作中です。これも、カギとなる曲を自分で作詞作曲したりしています。さすがにボーカルは別の方に依頼しましたけど。

*『きこえる』は2023年11月に発売された

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加藤 めちゃくちゃ楽しみですね。『いけないⅡ』も前作とはまた違った趣向があって。第二章の子供たちの夏の冒険がすごく好き……好きだからこそ「どうか不幸なことが起きませんように」と祈るように読みました。「でも道尾さんはやるからな」と半ば覚悟しつつ(笑)。

 SNSの反響などでは、「DETECTIVE X」の後に、最初に読んでみる道尾さんの本として『いけない』を選ぶ人が多いみたいですね。

道尾 犯罪捜査ゲームで一番惹かれるのは、自分で能動的に解決する気持ちよさだから、“能動的”つながりの一冊にいくのかもしれないですね。