「ファミレス第1世代」に生まれている変化

 そもそもファミレスは、高度経済成長期に人々のライフスタイルの変化に合わせて発達していった経緯がある。その結果、和洋中と何でもありのメニュー構成が生まれた。「ガスト」「ジョナサン」などを擁し、今やおなじみのファミレス企業として、その筆頭を走るのがすかいらーくだ。

 ファミレスの雄で総合型を広めてきたすかいらーくグループでも、近年は特化型へのシフトが進みつつある。同社では近年、典型的な総合型ファミレスであるジョナサンの店舗数を減らしてきた。コロナ前の2019年ごろと比較して、店舗数は半減近い水準となっている。同じ総合型のガストも100店舗ほど減っているが、こちらは「から好し」ブランドとの併設店として特化型に寄せてきた。ジョナサンなどの跡地でも、別の特化型業態をオープンさせており路線変更は明らかだ。

 例えば、好調のしゃぶしゃぶ専門店「しゃぶ葉」。さらに、福岡で絶大な人気を誇るローカルうどんチェーン「資さんうどん」をM&Aで傘下に加えたことも話題になっており、今後はこうした特化型業態の展開を加速していくとみられる。

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「あの店のあれが食べたい」がある店は強い

 今、外食業界では総合型から特化型へのシフトが隆盛だ。背景にはコロナ禍やSNSの発達がある。

 周知の通り、コロナ禍で外食をする機会が減った。外食回数が減ったことで、1回の外食の目的性が高まり、外食の際は店選びをしっかりと吟味するようになった。コロナの影響が薄まった今でも、だ。

 そんなときに選ばれるのは、何でもある総合型よりも「これが食べたい!」という品がある特化型の店なのは言うまでもない。コスパ・タイパ重視の風潮も相まって、わざわざ行くなら何かしらの特別な体験や付加価値がほしい。SNSでも何かインパクトの強い名物がある店の投稿がバズりがちである。

 香港式ファミレスという目新しい業態やすかいらーくの変化は、このような「何でもある店にふらっと入る」から「あの店のあれが食べたい」とわざわざ行くようになった世相が背景にあるのだ。

個人店の「ファミレス化」が進んでいるナゾ

 ファミレスを巡っては、全く別の事情で小規模な企業や個人店が「ファミレス化」していると筆者は感じている。

 もともと小さな店は、特化型の飲食店であることが多い。というか、必然的にそうなる。総合型をやろうにも、規模の力で大手チェーンに勝つことはできない。大手ができないニッチ領域に切り込むことで小さな店にも勝機がある、というのがセオリーだったからだ。

 ところがここ最近、中小規模の外食企業オーナーが「ファミレス、あるいはファミレスみたいなスタイルの店をやりたい」と話すのを頻繁に聞く。要は1日を通じて営業し、老若男女の誰しもが楽しめる、時間や客層を選ばない店だ。一体なぜいま、不利とも言えるフィールドに踏み入れようとしているのか。

 答えはいくつかある。