私の代名詞はファウチ起訴だ

 加えて、これにぶら下げたツイートや関連の返信などで、大統領首席医療顧問でコロナ禍対策を事実上指揮したアンソニー・ファウチ医師が、コロナに関してソーシャルメディアで隠蔽工作を仕組んだことの証拠がツイッターファイルでみつかったともほのめかした。

 どの「代名詞」で呼ばれたいかを表明することを自分はどう思うかも、歯に衣着せずに書きたてた。トランスの人々が反応せずにいられない話題である。というわけで、賛否両面、数え切れないほどのコメントが寄せられた。しかも、少し前ならヨエルのチームにヘイトスピーチだと認定されたかもしれないものが少なくない。

 著名人もたくさん参戦した。そのひとり、NASAの宇宙飛行士、スコット・ケリーは次のように書いている。

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 社会の片隅に押しやられていて、暴力の危険にさらされている #LGBTQ+の人々をあざけり、憎しみをあおるようなことはやめていただけませんか。あの人たちも、リアルな感情を持つリアルな人間なのです。ファウチ医師も、公僕として、命を救うことだけをめざした方だと思います。

 これにマスクは反撃した。

 それは違います。頼んでもいない人に代名詞を強制するのは、また、そうしないのはおかしいかのように言うのは、いいことでもなければ、優しいことでもありません。

 ファウチは、議会にウソをついて機能獲得型の研究に予算をつけ、大勢を殺した人です。私には、すばらしい人であるなどと、とうてい思えません。

 芸術的なまでにトロールで、ヨエル・ロスもロビン・ウィーラーも、クビになっていなければ急いで逃げたくなったに違いない。犬笛といけにえと陰謀論が絶妙にブレンドしてあって、東欧の一流トロールファームあたりなら自慢の種にしそうだ。であるのに、その発信元は、アゼルバイジャンの倉庫ではなく、ツイッターのCEOなのである。

 そんなマスクなら、冗談のわかる1万8000人に囲まれ、現実世界の闇で気晴らしをしようとするのも当たり前だろう。もともとコメディが大好きだし、子どもっぽい笑いであればあるほどいいのだ。ツイッターの名前からwをなくしてクスクス笑いのTitterにしたらいいと言ったこともあるし、ツイッターの買収などまだ考えたこともなかった2021年の5月、サタデー・ナイト・ライブのホストを務めるなどもしている。

 世間の評価は例によって否定的なほうが多かったが、会場は大いに盛りあがった。それもそのはず、自分は自閉スペクトラム症だと自虐ネタをかました上、任天堂のワリオからZ世代の博士まで、幅広いキャラを演じたのだ。でも一番は、彼が彼らしくあったからだろう。世界をよくしたいとがんばっている、おもしろくて愛嬌があり、かつ、頭のいいビリオネア、だ。

 愛される人物、ほめられる人物、大歓迎される人物だ。

 大手メディアになんと言われようと、中道左派の学者やジャーナリスト、セレブからどれほどののしられようと、知ったこっちゃない。冗談のひとつくらい言えないのかよとしか思わない。斜陽の新聞を渡り歩く専門家にどう思われようと、気にする必要などない。

 現実世界で、自分はイーロン・マスクでありつづけるのだから。

 愛される人物、ほめられる人物、大歓迎される人物だ。