今年も「富士総合火力演習」(総火演)の季節となった。総火演が東京五輪2020とコロナ禍の影響で8月から5月に開催されるようになり、一般公開をやめ、「部内教育」という本来の目的に立ち返って早5年が過ぎた。今年も小は20式小銃の5.56mm弾から大はミサイルまで富士の裾野の陸上自衛隊東富士演習場ではドカンドカンと実弾が飛び交い、ゴーゴーと戦車の咆哮が大地を揺るがした。
今年初めて新兵器が公開
そんな総火演に今年初めて、12(ヒトニー)式地対艦誘導弾(ミサイル)の能力向上型や島嶼防衛用高速滑空弾の発射機(ランチャー)等の新兵器が公開された。束の間の平和の日本と変わって、突如ウクライナにロシア軍が侵攻して、早3年、今や、戦火は収まるどころか、中東にまで拡大するばかり。ドサクサにまぎれ漁夫の利を得んとする独裁者は後を絶たず、次は「台湾有事」まで囁かれる始末である。
我が国も戦後80年間、幸いにも内地は戦禍にまみえることはなかったが、北海道北方領土はソ連、後のロシアに、島根県竹島は韓国に侵略され、今も不法占拠されるがままに加え、沖縄県尖閣諸島周辺海域はもはや実質中国の海と化し、日本人が自由に航行、立ち入ることさえできんのである。このまま台湾有事に陥れば、沖縄本島までドミノ倒しのごとく中国の島となりかねず、かくして開発、国産化されたのが今回初披露された12式地対艦誘導弾の能力向上型や高速滑空弾なのである。
射程1000km、迎撃されにくい本体の12式誘導弾
その威力は射程にある。通常の12式誘導弾が射程200kmくらいなのに対し、能力向上型は1000kmはあると言われており、最終的には1500kmという「トマホーク」巡航ミサイル並みに伸ばすというのである。さらに誘導弾(ミサイル)本体もステルス性(レーダーに映りにくい)を帯び、高速化し、迎撃されにくい。つまり、命中率も向上するという訳である。
この12式の通常型と能力向上型の違いは発射機(ランチャー)のキャニスター(筒状の容器)数が通常型が6本、能力向上型が4本と減少していることにより、誘導弾(ミサイル)本体が射程を伸ばすためか、ステルス性を帯びているためか大型化したと思われる。この12式地対艦誘導弾の能力向上型の配備により、我が国はついにケンポーの呪縛から解放され、敵の射程圏外からでも艦艇や敵基地を攻撃できる能力を備えた、いわゆる「スタンド・オフ・ミサイル」を有するようになるのである。


