今年3月、偉大なチャンピオンが天に召された。ジョージ・フォアマン(享年76)。この名を聞いて何を思い浮かべるだろうか。「象をも倒す」と形容された剛腕。モハメド・アリに初黒星を喫した“キンシャサの奇跡”の敗者。そして、45歳9ヶ月で再びヘビー級王者に返り咲いた男。その紆余曲折あるキャリアは一言では語れない。ましてや2時間の映画にするなど不可能……と思われたが、それを可能にした作品が『ジョージ・フォアマン:45歳のヘビー級チャンピオン』だ(日本では劇場未公開。ネットフリックス他で配信中)。
「俺は28歳の時に死んだ」
物語はフォアマンが語るこの言葉から始まる。彼の人生はまさに28歳を境に前半と後半に分かれる。そう聞くと、
「アリに負けた時のことか」
と早とちりするかもしれない。モハメド・アリに敗れたのは25歳の時だ。その3年後に一体、何があったのか。
貧しい家庭に生まれ、幼い頃のあだ名は「プアマン(貧乏人)」。だが、天賦の才があった。ボクシングを始めて僅か2年足らずでメキシコ五輪で金メダル。プロ転向後も37戦全勝で、アリにも勝利した当時無敗の王者ジョー・フレージャーを滅多打ちにし、2回TKO勝利。24歳の若さで新王者となる。だが1年後、アリに敗れ王座陥落。再起を図る28歳の時、格下のジミー・ヤングに敗れた直後、ロッカールームでフォアマンは神秘体験をする。卒倒し意識を失った後、目覚めた彼はこう叫んだ。
「主が俺の中に生きている!」
そして突如引退し、牧師になった。その後はまるで別人。柔和でユーモア溢れる好人物に。見た目も体重140kg超の肥満体型になった。だが、引退から10年、38歳で現役復帰を果たし、45歳で再び王座に返り咲くのだ。いやはや、なんという人生だろう。
筋骨隆々の20代から体型が一変した40代までを1人で演じきった主演のクリス・デイヴィスの好演も光る。
INFORMATIONアイコン
『ジョージ・フォアマン:45歳のヘビー級チャンピオン』
https://www.netflix.com/jp/title/81691509




