演奏についていけず、仲間から「辞めてくれないか」と…

――NUMBER GIRLは1999年にメジャーデビューし、2002年に解散しました。解散後は、ZAZEN BOYSのドラマーとして活動したものの、2004年に脱退されています。

アヒト NUMBER GIRLの解散後、向井君に誘われてZAZEN BOYSを結成したのですが、このころからジストニアが悪さをして、バスドラム(足でキックペダルを踏んで音を出す太鼓)が踏めなくなって。やっぱり向井君が要求するレベルは高いですから、演奏についていけずに「辞めてくれないか」と。正直、人間関係的にかなりぎくしゃくしていました。

NUMBER GIRL時代から、ジストニアに苦しめられていた ©文藝春秋/釜谷洋史

――ジストニアは、ZAZEN BOYSのころに発症したのですか。

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アヒト いえ、NUMBER GIRLのころからです。なので、ジストニアとの“付き合い”はだいぶ長いですね。自分にとってバンド活動は、音楽との戦いというよりも、ジストニアとの戦いの方が比重が大きかったです。

――ジストニアで、具体的にどのような症状が出るのでしょうか。

アヒト 痛みとかではなく、力を入れたくない箇所で力が入る、みたいなイメージですかね。例えば、バスドラムを叩こうとすると、うまくペダルを踏めずに足が固まってしまうんです。

 難しいのは、毎回ダメというわけではないこと。調子が良いときもあるんです。「あれ? 今日はすごくキックの調子が良い」みたいな感じで。でも、ダメなときは本当に全然動かなくなってしまう。リハーサルでは問題なかったのに、本番で発症することも多々ありました。制御ができないんです。

変なタイミングで力が入るのが、ジストニアの症状の一つだという ©文藝春秋/釜谷洋史

――近年は、RADWIMPSや、Aqua Timezのドラマーがジストニアを公表しています。 同じようにジストニアで苦しんでいるミュージシャンとの交流はあったりしますか?

アヒト それが、ないんですよ。みなさんそれぞれ、微妙に症状が違うみたいですし。ただ、ドラマーはキックが踏めなくなったという人が多いようですね。自分もそうです。ドラマーだけでなく、同じように楽器を演奏している人が発症しやすいようで、ミュージシャンの職業病みたいなものなんだと思います。