「昨日はすんなり叩けた」は信用できない
――ドラマーとしてではない音楽活動としては、ボーカル・ギターを務めているVOLA & THE ORIENTAL MACHINEでの活動も2005年からされています。
アヒト VOLAの活動もしばらく止まっていましたが、最近はサブスクの普及で、若いお客さんが増えてきたのを実感しているんです。「おじさんがやっているロックでも、刺さると観に来てくれる」と思うと、やる気が出てきますよ。
――VOLAはこれまでと異なり、自身がフロントマンのバンドです。心境の変化や気付きなどはありますか。
アヒト 意識の違いはありますね。とにかくVOLAではフロントマンの責任感がすごくありますから。演奏だけをしていてもつまらない、自分が引っ張っていかなきゃという感じです。
最近では、醸造家とコラボしてビールも作っています。いつもステージ上で来場者と乾杯しているんですが、それを自分のビールでできたら良いなという思いがあったので、作れてうれしかったです。こういう、演奏以外の部分で何ができるか考えるのが、楽しいですね。
――3月の発表から数カ月がたちました。現在のジストニアの症状はどうでしょうか。
アヒト ちょっとずつですが、ドラムは叩いています。心とリンクしているというか、「今日はいけるな」って思えると、不思議と本当に大丈夫なことが多いんですよ。
でも「昨日はすんなり叩けたな」というのが、実は罠なんです(笑)。そこで自信をつけて、バンドに入ってドラムを叩くと「やっぱりできないな」ってなる。その繰り返しです。それでも、少しでもドラムを叩けたら自分にとってすごくうれしいのは間違いない。調子が良いときは「NUMBER GIRL本人が叩いてみた」動画も少しずつアップしていこうかなと思っています。
――やはり、ドラムに未練はありますか。
アヒト 今もちゃんとドラムが叩けていたら、違う人生があったのだろうなと思いますよね。だから、自分の現状がすごく残念だなと感じる時はあります。今は家業の会社でサラリーマンとして働いているのですが、それもなかなか大変で。
過労でパンクしてしまい、昨年末にうつ病になり、全身が痙攣することもありました。10キロくらい痩せてしまいましたし。
続く記事では、現在地元の九州で会社員として働くアヒトさんの「セカンドキャリア」について聞いています。当初は「名刺の出し方すら知らなかった」と振り返る1人のミュージシャンが、どのように会社員生活に馴染んでいったのか、またどんな仕事ぶりをしているのか、ぜひお読みください。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。




