ライブ中もジストニアが発症することが…
――NUMBER GIRL再結成の話が出たときは、すぐに参加を決めましたか?
アヒト 再結成の話を聞いた当時、他のメンバーは最前線で活動していたのですが、僕だけ音楽から離れていました。ジストニアのこともあるし、すごく悩みましたね。みんなは即答だったらしいですけど、僕は「ちょっと考えさせてくれ」と、1週間くらい時間を置いて考え抜きました。
――再結成後、2022年の「解散ライブ」では、3時間近く演奏を行っています。ジストニアの症状を抱えながら、どのように臨まれましたか。
アヒト これはもう気合いでやるしかないと。それくらいです。めちゃくちゃ緊張していましたし、ドラムの出来は良くないと思います。そもそもジストニアの症状が出るとリズムが崩れるんです。過去のライブ音源などを聴いてもらうと「ああ、ここでジストニアと戦っているんだな」と分かると思いますよ。2022年のときは緊張も加わって、さらにリズムが速くなっていたんじゃないですかね。
――それでも、アヒトさんはいつも涼し気な表情で演奏している印象です。
アヒト いやいや、よく見ると結構「イーッ」て食いしばった顔で叩いていますよ(笑)。自分にとっては「ドラムス、アヒト・イナザワ」っていう向井君のメンバー紹介が逆に重荷になってしまうこともあったくらいですから。「いやいや、俺、そこまで叩けないぜ」って。本当にいつも必死でした。
――3月にドラム活動を中止すると公表されました。長らく向き合ってきたドラムが叩けなくなる状況は、すんなりと受け入れられましたか。
アヒト いやいや、つらかったですよ。今でもかなりつらい。それまでは、今の拠点である福岡で自分が正式メンバーではないバンドのサポートとしてドラムもやっていたんですが、ジストニアの症状が今年に入ってから顕著になって、ああいう発表になりました。
――「引退」ではなく「中止」という言葉だったのが印象的です。
アヒト ドラムを完全に辞めたわけではなくて、やっぱりドラマーとしてバンドに戻りたい思いがありますから。ミュージシャンとしての意地みたいなものもあるので。ただ、みなさんに愛されてきた「ドラムス、アヒト・イナザワ」というブランドが、ジストニアと向き合うなかでちょっと重圧になっている。それに見合うプレイをしなければならないと思うと、今は中止というのが正しいのかなと。




