巨大団地が直面する“社会問題”

 とはいえ、村山団地を取り巻く環境も半世紀以上の間に大きく変わっている。肝心要の日産自動車村山工場は2001年に閉鎖されてしまった。村山団地も他のニュータウンと同じく住民の高齢化や流出に頭を悩ませる。

 

 平成に入ってから、村山団地では建て替え事業も進んでいるという。団地の中を歩いていると、実に古めかしい棟からピカピカの新しい棟、またその合間に空き地があって、というまだら模様。いまもまだ、建て替え事業の真っ只中ということなのだろう。

 

 それでも団地西通りの商店街は、それなりにたくさんの人で賑わっていた。お昼時にはどこを覗いても飲食店は混み合っているし、自転車で買い物をしている地元の人の姿もちらほらと。

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 往年、どれほど活気があったかはわからないが、まだまだこの町は元気である。いくら多摩地域の外れといっても、さすがの東京なのである。

 そうした町に、新しく鉄道、モノレールが通る。これもまた、さすが東京というべきか。村山団地が生まれたとき、膨れ上がる人口と住宅不足が社会的な課題だった。それがいま、日本社会は当時とは正反対、大都市郊外も例外なく、人口減少に悩まされている。

写真=鼠入昌史

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