核爆発で地球から宇宙空間へ吹き飛ばされたタンポポの種。その生き残りである4つの小さな生命体の、壮大な冒険を追いかけた映画『ダンデライオンズ・オデッセイ』(原題: Planètes/日本公開未定)。カンヌ国際映画祭の批評家週間でクロージング上映され、国際映画批評家連盟賞を受賞。続けて、アニメ映画祭最高峰のアヌシー国際アニメーション映画祭でも、特別賞であるポール・グリモー賞を獲得した。

 核戦争がリアルに感じられるこの時期に、アニメと実写を融合させて異色の生命賛歌的作品を生み出した在仏の瀬戸桃子監督に、カンヌで話を伺った。

映画『ダンデライオン・オデッセイ』 ©Miyu Productions

植物が主人公の映画を作りたかった

――初めてカンヌに参加されたご感想は。

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 エモーショナルな体験でした。一般の観客に見せるのも初めてで、どういう受け止め方をされるのかわからず心配もありました。でも最後には気持ちを込めて拍手していただき、伝わったものがあるんだなと。笑いだけでなく「泣いたよ」という観客もかなりいました。タンポポを見て泣けるなんて、素晴らしいなと思って。カンヌ映画祭自体はカーニバルみたい。スターシステムが強い映画祭だと感じました。

瀬戸桃子監督 ©林瑞絵

――主人公をタンポポにしたのはなぜですか。

 植物が主人公の映画を作りたかったのです。猫やウサギなどはありますが、主人公がタンポポはなかなかないかなと。植物はあまり動かないので冒険映画を作るのは難しいけれど、タンポポの種なら多彩な動きがあるじゃないですか。飛ぶだけではなく、転がったり、水に流されたり。そして風が大切な味方だったり。その上、種になったらキノコの隙間など、入れないところにも入って大冒険になると思いました。

――キャラクターの造形は擬人化し過ぎず、でもきちんとそれぞれの “キャラ”を感じました。

「擬人化し過ぎない」という思いは最初っからありました。「人間が種になる」のではなく、ただ種になるのです。だから人間の言葉も人間の動きもあまり使いたくなかったのです。

 しかし、結局のところ、この映画は人間向けの映画なので、少なくとも擬人化する部分を最小限に抑える必要がありました。風で飛ぶといった種らしさは大事にして、キャラクターの感情やギャグなどは擬人化したという感じです。