ゼメキスの『ロジャー・ラビット』に近い
――生きとし生けるもののそのままの素晴らしさがあります。映画『Flow』も思い出しました。ジャンルは「アニメ」とありますが、作品の紹介が難しいのでは。
「アニメ」だけだと少々語弊があります。タンポポは3Dアニメで描かれていますが、周りはほぼ実写です。アニメと実写を混ぜたところはロバート・ゼメキスの『ロジャー・ラビット』に近いです。実写部分はフランス、アイスランド、日本の3カ国で計260日間撮影をしました。日本は苔、ギンリョウソウ、黄金虫の撮影で屋久島に行きました。ホタルイカは富山で撮影しました。
――制作にあたって最大の挑戦はどんなことでしたか。
タンポポの種でいかに感情を伝えるか、が大きなチャレンジでしたです。編集や撮影、音楽、ポストプロダクションの時も、「感情を伝えるのが優先」とよくチームメンバーと確認し続けました。私はヴィジュアルアート出身なので、どうしても映像を優先してしまうところがありました。
主人公であるタンポポの種のデザインはスティック状でほとんど一本の線。そしてスティックの先に髪の毛のような綿毛が付いてるだけなので、顔がついている動物よりやはり感情表現が難しいです。なので、様々な(動作の)ボキャブラリーをリードアニメーターと考えて作りました。
悲しい時に綿毛が落ちるとか、歩き方をちょっと変えるとか。一本一本、動きも性格もみな違うのです。観客に感情移入をしてもらえるように動かすのが難しかったですね。
――エンドロールには「脚本アドバイザー」として、ピエール・ショレール監督(『ベルサイユの子』)の名がありました。彼はどういう形で関わられたのですか。
ショレールさんは他の監督のシナリオもたくさん書く方なんですよ。今回はシナリオが煮詰まった時に読んでいただき、アドバイスをもらいました。「なぜこのキャラクターはそっちに行かなければならないのか」という時など、そのきっかけについて一緒に考えたり。彼はとても良い視点を持っている方です。


