所属先はフランス国立科学研究所
――監督はフランスの研究所ご所属とのことですが、肩書き的には研究員なのですか。
いや、CNRSというフランス国立科学研究所で働く映画監督です。私が働いている「芸術・言語研究センター」(Centre de recherches sur les Arts et le Langage)はフランス国立社会科学高等研究院(EHESS)内にあります。その中で映画を撮っています。本作は、フランス国立科学研究所が共同製作に最後の最後に入り、ここからも資金が出ています。
――では、製作会社のMiyu Productionsと対話しながら作ったということですか。Miyu はベルリン映画祭で銀熊賞(審査員賞)を受賞した水尻自子監督の『普通の生活』も製作しています。
今回は様々な共同製作会社が入っていますが、主にMiyuと作りました。Miyuはこれまで水尻さんや和田淳さんなどの日本人作家の短編や、『化け猫あんずちゃん』(久野遥子氏と山下敦弘氏の共同監督)の共同製作をしています。ただ、これらの作品は日仏の共同製作で日本がメインのものです。
フランスは映画に様々な支援があるので、それを申請して、足して作っているのです。Miyuが作るというよりは、「作品を作っている日本人と組む」という感じです。一方、私はフランスに住む日本人であり、タイプが違います。今回はMiyuにとっても稀なことですが、ほとんど全部自分たち(フランス)で作ったのです。(注: 資本の割合はフランス82.13%、ベルギー17.87%)
興味があるのは「今まで見たことも聞いたこともないもの」
――ところで瀬戸監督はリセ・フランコジャポネ(東京のインターナショナル・スクール)ご出身です。ご両親は日本人ですよね。日本にいながらフランス語を勉強したいと思われたのですか。
全然思ってなかったです。学校に入れられた時は6歳でしたので。母の意向でした。
――お母さまがフランス好きだったのですか。
いえ、好きではないし、フランス語も全く喋れないです(笑)。学校が親の事務所の横にあったんですよ。母が日本の学校に私を入れたくなくて、外国の学校を探したのですが、アメリカは好きでないからアメリカン・スクールは避けました。ちょうど会社の横にフレンチ・スクールがあったので、「そっちの方が便利だから」みたいな感じで入りました。
――(笑)。今思えば、フランスで監督として活動するのにぴったりの選択だったのでは。そして、なぜ瀬戸監督は映画に興味を持たれ、映画を撮り始めたのでしょうか。
特に映画を作りたいと最初から思っていたわけではなく、元々美大でユニークな実験映画などを作っていました。自分的に興味があったのは、「キャスティングは誰だ?」とか、「どんなストーリーを作るのか?」とかではなく、「今まで見たことも聞いたこともないものは何だ?」とか「どんな物語が新しいのか?」という質問をベースにした作品制作でした。なのでクラシックな実写映画を作っている監督達とちょっと出発点が違うような気がします。作っていた実験映画が様々な映画祭で上映され、そこからどんどん映画の世界に入っていきました。
――本日はありがとうございました。


