「ジャベリン」で160キロ超に納得

 山本はウエイトトレーニングを行わず、独自のエクササイズを実践していますが、なかでもやり投げの練習器具「ジャベリン」を取り入れたトレーニングは独特だったとグラスノーは述懐しています。これはアメリカでは誰も行っていない練習方法で、グラスノーは山本から、ジャベリンを使った投球動作が肩の健康を守る効果があることを学び、実際に投げると痛みがなかったと明かしています。

 また、彼は山本の柔軟性と可動域にも衝撃を受けたようです。山本は、ブリッジの状態で身体を回転させるというトレーニング方法も知られていますが、まるで骨がないゴムのように身体が動くのです。さすがにこれは誰にでも真似できることではありません。

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 グラスノーは、山本がいかに洗練された独自のトレーニングを実践しているかを目の当たりにして初めて、投手としては小柄な山本が160キロ超のストレートや多彩な変化球を操っていることにも納得がいったと話しています。 

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 もともと日本時代の山本は左足を高く上げて、トップを作って上から下へと投げ下ろす投球フォームでした。ところが、2023年からは地面から数十センチほどの高さで移動させるスライドステップから投げる、効率の良いフォームに変えたのです。打者から見ると、より向かってくる感じがするため、タイミングを合わせる難易度も上がりました。

ヤンキースのウィーバーも山本を研究

 実は、2024年のヤンキースでクローザーを務めたルーク・ウィーバーは、山本のこのスライドステップから投げるフォームを研究して、取り入れたと明かしています。ウィーバーは「僕は山本のような驚異的な柔軟性を持ったアスリートではないので、まったく同じような動きとはならなかったけれど、山本のメカニクスは素晴らしいので、このメカニクスを基に自分用に改造することができて良かった」と言っています。

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 このようにメジャーに移籍した年から、他の主力投手に注目され、影響を与えているのが山本です。これは本当に凄いことだと思います。おそらく彼のピッチトンネルの技術も、その投球フォームがシンプルで再現性が高いから高度にできるということもあるでしょう。今後は、もっと多くの投手が、彼のトレーニングやメカニクスを学んでトレーニングしていくのではないでしょうか。山本は、メジャー一年目から素晴らしい瞬間を多く見せてくれましたが、まだ26歳です。来年、そしてこれからの数年でもっと素晴らしい投手となっていくことでしょう。

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