振り込んだお金は「高い結納金」のつもりだった
恒松氏が渡邊被告のウソを簡単に信じてしまった背景には、恒松氏の孤独な身の上やマニュアルの存在があった。しかしそれ以上に、渡邊被告が自身のコンプレックスや弱点を受け入れてくれるように感じたことが大きかったという。
「私は目が悪く、車の運転はあまりしないようにと言われているのですが、土地柄、車がないと生活ができない。そのことを話すと『私が免許を取って車も買う。真衣が洋一君の目になるよ』と言ってくれた。それが、心が震えるほど嬉しかった。心を動かされてしまったんです」
恒松氏は、渡邊被告に「お金を渡す代わりに、電話でもいいから親と話させて」と求めた。彼の中ではあくまでも、“高い結納金”のつもりだったという。大金を振り込んだ後に、恒松氏が感じたのは「詐欺だったらどうしよう」という疑いや不安ではなく、「ああ、これで問題は解決した。結婚できる」という、安堵の気持ちだった。
連絡が取れなくなることの繰り返し
だが、200万円の振り込みが終わった途端、渡邊被告からの連絡は途絶えてしまう。
「電話も繋がらないし、LINEも既読にならない。さすがに騙されたと思って、焦りのあまり《バカ女》とか、きつい言葉も送ってしまったのですが、しばらくすると『充電が切れてた』とか『疲れて寝てしまって連絡ができなかった』とか、それらしい言い訳をする。そんなメッセージを見ると、きつい言葉を言って悪かったな、と思って……でもまたしばらくすると連絡が取れなくなる。その繰り返しでした」
業を煮やした恒松氏は、渡邊被告にこうLINEした。
《真衣ちゃんが俺の立場で200万用意して 俺が遠くで受け取って。
昨夜みたく連絡取れなくなったらどう思う?
騙されたって思わない?
お金貯めるのは本当に大変なんだよ。
これは分かってるだろうけど。
本当に好きだから。
連絡取れなくなると不安なんだよ!!
真衣ちゃんの。親の事だって。
お金用意するのは良いとしても。
それに対する真衣ちゃんの気持ち。俺に対するわるいって気持ち? も分かるよ。
でもね 200万送金して。昨日みたくなるとさ。ね? 不安でしょ。》