彼女の様子が変わったのは、秋葉原で食事をした2日後のことだ。

「『どうしよう 私いなくなるかも』とか、『また必ず連絡するから心配しないでね』とか不穏な内容が送られてくるようになった。びっくりして、『どうしたの?』と聞くと、『親と不仲で、手切れ金としてこれまでの養育費800万円を払わなければいけない、そのお金を用意しなければいけない』と言う。思い返せば一番最初に会った時から『真衣は普通じゃない』『家庭環境が悪い』と、親と不仲であることを匂わせていました」

渡邊被告は再び恒松氏の住む町までやって来て、恒松氏の家で改めて「家族と早く縁切りしたい」「2人で一緒にいるためには養育費を払わなきゃいけない」と話した。その結果、恒松氏は渡邊被告の話を信じ込み、貯金に加え、生命保険を解約してまずは200万円を振り込み、近いうちに残りの600万円を渡す約束もした。

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「好きという感情しかなかった。一目ぼれだった」

だが、どうしても疑問に思ってしまうのは、まだ知り合って1週間、しかも3回しか会っていない相手に、どうしてすぐにそんな大金を振り込んだのか、ということだ。

「怪しい、とか、騙されているとは思わなかったのでしょうか」と聞くと、恒松氏はこう答えた。

「確かにおかしいとは思ったけれど、その頃にはもう『好き』っていう感情しかなかったんですよね。一目ぼれだったし、趣味も合った。何回も『すき』『すき』と送ってくれて、『今度はどこ行きたいね』『あそこ泊まってみたいね』とか、未来の話をする。彼女との将来を想像するようになってしまっていたんです」

2人の間には結婚の話が持ち上がり、7月には恒松氏の自宅で一緒に暮らそうという話にもなった。恒松氏は若くして両親と弟を亡くし、天涯孤独だ。だからこそ「結婚」に対する思い入れがあったのだという。

「問題を抱えているのであれば、一緒に解決をしていこうと、真剣に思った。

今にして思えば、私に好意や恋愛感情を持たせた上で、未来を想像させようとしたのでしょう。事件後に、警察からマニュアルを見せてもらう機会があったんですが、そこに載っていた『未来系色恋会話』というテクニックを読むと、私への対応の内容そのままでした。だけど当時は気がつかずにハマってしまった」