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あえて送料を「有料化」する理由

 品揃えを充実させるための重要な施策として、7月6日から、買取システムを改革する。それは、従来の買取価格を1・5倍に引き上げ、その代わりにそれまで無料だった送料を500円とする――というもの。「送料無料」で消費者にアピールする企業も多いなか、送料を「有料化」するのは珍しい取り組みだ。

 バリューブックスとしては、買取価格を上げることで、より多くの販売可能な中古本を集めたい。例えば、これまでなら100冊で1万円の査定価格がつく古本の買取を依頼した場合、その査定額は1万5000円となる。その代わり、500円の送料がかかるので、実質4500円の買取金額のアップとなる。従来の査定金額が1001円以上なら、送料の500円を払っても、買取金額が500円以上増える。送り手が得をする仕組みを作ることで、送料の有料化を可能にしたのだ。

©VALUEBOOKS

「査定額のアップと500円の送料を徴収することで、中古商品を送ってくれるお客さんにコスト意識を持ってもらうことが狙いです」(中村)

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 この新たな取り組みを始めるにあたり、利用者がネット上で、事前に中古本のおおよその査定額を調べられるシステムを導入する。送る側が事前に下調べをして販売可能な本を見極めて送ってくれれば、それに見合うだけの査定額を支払いましょう、という考えだ。同社にしてみれば、これまで自社で廃棄していた本の送料をコストカットすることができる。また、これまで半分以上の古本が、商品とならずに古紙回収業者に回されてきたが、そうした古本を自分で捨ててもらうことで、古本の輸送によって環境にかかる負荷、そして物流への負荷を減らす、という狙いもある。

「宅配危機といわれる今日、中古本を送ってくれるお客さんと、われわれにとってウィン―ウィンとなるような仕組みとして立ち上げていきたい」と中村は語る。

 なお、これまでのように送料無料での査定を選択したい送り主は、従来からあるサービスの〈Vaboo(バブー)〉を使うことができる。

書籍を棚に入れる従業員 撮影:横田増生

 同社にとって本当の勝負は自社サイトでの販売に成功するか否かにある。それに成功すれば、現在のプラットフォーマー頼りのビジネスモデルから脱却し、自社で完結する販売チャンネルが確立でき、利益率も上がるようになる。

 中村に意気込みを聞けば、「自社サイトを立ち上げて、5年で、自社サイトの売上比率を全体の5割まで引き上げたいですね。すごく大胆な目標なんですけれど」と、はにかんだように笑った。