プロ野球で「たった一人」だけが達成している記録
それはパーフェクトを続けていた7回2死を奪ってからのことだった。打席に若き主砲・王貞治を迎えた。以下は、外木場の話である。
「王さんのあの打席では、決めにいったカーブがいいコースにいった。フツーの打者ならストライクと言ってもらえたかもしれない。王さんも手が出なかったように見えた」
ところが球審の判定はボール。これが当時、球界で囁かれていた“王ボール”なのか。球審は「あの王が振らないのだから……」。この判定によるたった一つの与四球のため、外木場は2度目の完全試合を逃した。試合後、王が白旗を揚げた言葉も残っている。
「球に勢いがあり、とてもかなわなかった」
カープファンなら覚えておこう。90年に及ぶ日本のプロ野球史で3度のノーヒットノーラン(完全試合含む)を達成したのは、無数にいたプロ野球の投手のなかで、沢村栄治(巨人)と外木場の2人だけである。しかもカープファンの視点から付け加えると、沢村は一度も完全試合を達成したことがない。
そうなると、日本球界で最高の投手は、この観点から書けば、外木場だったということになる。この辺りが外木場の話になると、なぜかドラマチックに“伝説”という史観的な言葉が付け加えられる所以になっている。
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