松坂が語る「イチロー攻略法」
アウトハイに関してはイチローさんが強く打っているイメージがなかったんです。アウトコースの低めからベルトあたりの高さはきれいにレフト線へ弾き返すイメージがあったんですが、アウトハイに関しては空振りとかファウルになるイメージがありました。
ああいう回転の球を投げたのは意図的というわけではありません。ただ、アウトローに決めようという感覚はゼロで、とにかくアウトコースの高めに投げたかった。イチローさんには低めは禁物、変化球も含めて、勝負球は高めでした。
第2打席はスライダーから入りました。2球目もスライダーを続けて、イチローさんは見逃します。3球目はストレート(151km)を投げて追い込みました。4球目に初めてチェンジアップを投げて低めに外れたあと、スライダーもインコースへ外れてフルカウント。6球目はアウトコースのボールゾーンからストライクになるスライダーで、見逃しの三振。
第3打席は内、外へストレートを5球続けて押しましたが、空振りは取れず、ファウルが3つ。でも6球目に投げたスライダーで、またも空振りの三振を奪って、3打席連続三振です。
3つ目の三振を取ったときはガッツポーズしました。イチローさんから3つも三振取ったし、一応、しとかなきゃなって感じです(笑)。
いちばん三振を取りたかったバッターだったし、そもそもガッツポーズが出てもおかしくなかったのは1打席目のはずなんですよね。まさか最初の打席で三振を取れるなんて思いもしませんでした。イチローさんからストレートで空振り三振を取れるなんて、想像もしませんからね。
初対戦は、打たれる気がしなかった
2つの三振を取ったスライダーはそれぞれ別の2種類のスライダーでした。僕は大きいスライダーと小さいスライダーという言い方をしていましたが、あまり曲がらないスライダーは高校のときから投げていました。大きいスライダーを見せておけばバッターはそのイメージを持ちます。
で、小さいスライダーを投げると、球の出どころとか回転の方向は同じスライダーのはずなのにイメージしていた軌道と違う。『あれっ、今のスライダー?』と戸惑うバッターの反応を高校の頃から楽しんでいました。
曲がらないスライダーは意図的に使っていたんです。大きいスライダーをイメージしてくるバッターに対して、同じような軌道で来ると思わせておいて、ちょっと抜けたスライダーを投げる。傍から見たら投げ損ないに見えるスライダーです。
小さいスライダーを投げるとき、僕、力をちょっと抜くんです。中指にかけている力を抜く。大きく曲がるスライダーはボールをしっかりグリップさせて投げるんですけど、あまり曲がらないスライダーは中指の力を抜いて、スライダー回転だけさせます。
イチローさんから取った見逃しの三振は大きなスライダーで、空振り三振のほうが小さなスライダーでした。曲がってこないほうで空振りを取ったときは、大きいスライダーの雰囲気を出してやろう、みたいな感覚はありましたね。僕としてはどっちのスライダーでいっても、あの初対戦の日は打たれる気がしませんでした。
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