「平成の怪物」、松坂大輔。日本球界にいたころは数々の大打者と名場面を繰り広げた。その筆頭といえるのがイチローだ。球史に名を刻む屈指の「天才バッター」と「平成の怪物」は、メジャーリーグでも幾度となく対戦した。

 メジャーでの初対戦は、松坂が所属していたレッドソックスの本拠地でのデビュー戦。晴れ舞台となるはずが、松坂は後悔を残しているという。ベースボールジャーナリスト・石田雄太氏の著書『松坂大輔 怪物秘録』から一部抜粋し、お届けする。(全3回の3回目/最初から読む

ポスティング制度を使い、松坂は2007年シーズンから活躍の場をメジャーリーグに移した ©文藝春秋

◆◆◆

ADVERTISEMENT

 初登板から中5日、メジャー2試合目の登板が本拠地のフェンウェイパークでのデビュー戦でした。その相手が、よりによってマリナーズです。そしてトップバッターは、あの鈴木さん(笑)。

 カンザスシティも寒かったけど、4月のボストンもかなり寒い上に、ナイトゲームでしたから冷え込むのは覚悟の上でした。でも相手がイチローさんなら、そんなこと、気になるはずはありません。むしろ気持ちが熱くなりすぎないよう、冷静に攻め方を考えていました。

 僕はオーソドックスな攻め方をすべきだと思っていました。僕の中にはイチローさんへのオーソドックスな攻め方というものがあります。でも同時に、初球、まっすぐを投げたら狙い打たれそうな気がしていたんです。

 それは2006年のWBC、アメリカ戦でイチローさんが(ジェイク・)ピービーから打った先頭打者ホームランが脳裏に焼きついていたからだと思います。イチローさんには絶対に打たれたくない……だんだんそんな気持ちが勝ってきました。