「平成の怪物」、松坂大輔。日本球界にいたころは数々の大打者と名場面を繰り広げた。中でも筆頭は、イチローだ。
球史に名を刻む屈指のバッターとの初対戦を振り返り、松坂は「打たれる気がしなかった」と話す。ベースボールジャーナリスト・石田雄太氏の著書『松坂大輔 怪物秘録』から一部抜粋し、お届けする。(全3回の2回目/続きを読む)
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「イチロー、来てるよ、イチローが来るよ」
あの日のことで今も覚えているのは、対決を前にイチローさんから挨拶に来てくれたことです。西武ドームのセンターのあたりでアップしていたら、イチローさんがレフトのほうから歩いてくる。僕は心の中で『イチロー、来てるよ、イチローが来るよ』ってドキドキしていました。先輩のピッチャーと喋ったあと、僕のところに来て「よろしく」と言ってもらったと思います。
僕はトレーニングコーチにストレッチしてもらっていたから、最初は寝転がっていたんです。でもイチローさんに声をかけてもらって、あわててストレッチを中断して身体を起こしてから、「はじめまして、よろしくお願いします」と挨拶をしました。イチローさんに会ったのも喋ったのもそのときが初めてでしたし、イチローさんのほうから声をかけてもらったので、もう舞い上がっていました。『オレ、あのイチローと喋ったよ』って(笑)。
つい最近、イチローさんから「大輔はあのとき、寝転がったまま、“ちーっす”と言った」と言われましたが、いやいや、それは絶対にあり得ない。イチローさんの記憶のほうがどこかでねじ曲がってるに決まってます(笑)。
