「平成の怪物」、松坂大輔。横浜高校で甲子園を春夏連覇した彼は、3球団競合の末に西武ライオンズへ入団した。

 しかし、周囲の期待とは裏腹にオープン戦では打たれ続け、監督から「いい加減にしろ」と怒られたという。ベースボールジャーナリスト・石田雄太氏の著書『松坂大輔 怪物秘録』から一部抜粋し、お届けする。(全3回の1回目/続きを読む

鳴り物入りでプロ野球選手となった松坂だったが、オープン戦では成績がふるわず、監督に怒られたこともあった ©文藝春秋

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 プロのキャンプでまず驚いたのは、一軍の投手陣の質の高さでした。西口(文也)さん、(石井)貴さん、デニーさん、森慎二さんの投げるまっすぐは速いし、変化球はキレるし……一緒に投げていてすごく楽しかったんです。高校のときは自分より速い球を投げるピッチャーを見たことなかったし、そもそも他の人が投げる150kmを間近で見たことがなかった。

 それだけのレベルのピッチャーが揃うブルペンで投げたこともなかったので、新鮮でした。自分と比べるとか、気圧されるような感じはまったくなく、こういうメンバーと一緒に投げられることがすごく楽しかったんです。

 慎二さんもデニーさんも、もちろん貴さんの球も速かったんですが、僕がもっとも速いと感じたのは西口さんのまっすぐでした。スピードガンで測れば他のピッチャーのほうが速かったのかもしれませんが、西口さんのまっすぐは質が違うんです。

 ブルペンで後ろや真横から見ていたんですが、リリースポイントが前なんですよね。どうすればああいう投げ方ができるのかと思って、西口さんの投げ方をずいぶんマネしてみました。下半身の使い方、動かし方、軸足の使い方、左足をステップするときの内側に絞る感じも……でも、いろいろやってみて、僕には無理だなと思いました(苦笑)。

 じつは西口さんも僕も身体、めちゃくちゃ硬いんです。でも、西口さんは内旋の動きに関してだけはめちゃくちゃ柔らかい。もしかしたら、僕とは身体の硬さの質が違っていたのかもしれませんね。