松坂大輔が「これがエースなんだ」と感動した先輩投手

 開幕投手ですか? テレビに出たとき、言わされましたね。ベテランの女性アナウンサーに「思い切って言ってみたらどうですか」なんて言われて、さすがにこれは言って大丈夫なんだろうかと思った記憶があります。次の日、「よくあんなこと言ったな」って、みんなにめっちゃ、イジられましたよ。

 だって開幕投手は西口さんに決まってますからね。ただあの年、西口さんもオープン戦の結果はよくなかったんです。甲子園のタイガース戦でメッタ打ちを喰らったあと、東尾さんにものすごい剣幕で怒られてるところをたまたま見ちゃいました。オープン戦とはいえこんなに打たれて大丈夫なのかなって、僕も思っていたほどです。まぁ、僕だってオープン戦ではさんざん打たれていたのにね(笑)。

1年目からローテーション入りして活躍した  ©文藝春秋

 それでも西口さんには開幕戦で投げる自覚はあったと思います。だって、ライオンズのエースは西口さんですから……あの人は本当にブレないし、いつも変わらない。実際、開幕戦で先発して、サラッとホークスを相手に完封したんですよ。あれにはビックリしたし、感動しましたね。これがエースなんだと思い知らされました。

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 僕はといえば開幕どころか、オープン戦で結果を出せずにいました。周りからは悩んでいるとか言われていたみたいですが、不安を感じたことはありません。僕、部屋が散らかっていても何がどこにあるのかはわかっているタイプなので、オープン戦でも自分の状況は把握していました。

 実際、ジャイアンツ戦で打たれた後(3月20日、仁志敏久、後藤孝志に連続ホームラン)も「舐めすぎました」と言いましたからね(笑)。打たれるとわかっていて投げたと、今でも言い切れます。ホームランを打たれたのはどれも「ここへ投げたら打たれるかな」と思って試した球でした。たとえばボール球が2つ先行した場面で緩いまっすぐを内角へ投げたらカウントを取れるかなとか……生意気ですけど、プロの実力がどういうものなのかを感じたい、知りたいと思っていたんです。