打たれ過ぎて監督から「お前、いい加減にしろ」と言われた

 オープン戦で相手の実力を測ろうなんて時期的に早すぎると思われるかもしれませんが、それでも実力のあるバッターのすごさはオープン戦でもわかります。だからこそ、打たれながらでもいろいろ試そうと思っていましたし、逆に抑えにいこうと思えば抑えられました。

 ただ、オープン戦の最後の登板となったベイスターズとの試合前、東尾さんにまあまあの強い口調で「お前、いい加減にしろ」と言われた記憶があります。「このままじゃ、ローテーションに入れられない、入れても周りが納得しない」って。「だから次のベイスターズ戦は絶対に結果を出せ」と言われました。たぶん、僕がいろいろ試していたことが東尾さんにはバレていたんでしょう。経験のある選手がオープン戦を試す場に使うのならともかく、プロ1年目の小僧がそれをやっていたんですからね。

その後、松坂は球界を代表する投手に成長していく ©文藝春秋

 僕もさすがに最後のオープン戦では結果を出さなきゃと思いました。ただ、「ハイ、わかりました、結果を出します」と言って出せるような簡単な世界じゃないことはわかっていたつもりです。いいボールを投げられてるからといって、いい結果が出るわけじゃない。それでもいいボールを投げる自信だけはありました。それが結果に結びつくかどうかがわからなかった。

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 試合前、上重(聡、PL学園~立教大)と電話で話していて、「次、結果出さないとヤバいんだよね」と言ったことを覚えています。やっぱり追い詰められていたんでしょうね。そういう意味では、あのピッチングでプロでもやれることは示せたと思います(3月28日のベイスターズ戦、6回を投げて被安打2、失点1、6連続を含む11奪三振)。

 打たせまいと思って投げたボールではすべて抑えられたし……あっ、でも鈴木尚典さんにホームランを打たれたスライダーだけは、本気で三振を取りにいった球でした(笑)。