そして第三に、骨ではなく筋肉や神経に異常がある場合、その異常は外からは見えないため、治療の手掛かりが患者による症状の説明となること。しかしここで患者が女性の場合、医者はかのじょがただウジウジと弱音を吐いているだけだと受け取る可能性がある。そして顎関節症の症状は女性に現れることが男性よりはるかに多い。大学歯学部口腔内科研究室の報告によれば、顎関節症のために病院に訪れる患者のなんと99.8%が女性であり、中でも20代の有病率が最も高いという。
起・承・転・女性ホルモン
「命にはかかわらないがやっかいなだけで答えのない病気」「原因が多様すぎる」「女性患者の訴えはただの弱音」。女性に多い病気にお決まりの文句だ。ここにあといくつかを追加すればそのレパートリーは完成だ。「ドクターショッピング(doctor shopping)する女」「病気不安症」「病者の役割を演じて得しようとしている」「精神の異常」「女性に多いのは女性ホルモンのせい」。
女性の健康状態はほぼ皆ホルモンで説明できるかのように言われている。女性の病気の原因がホルモンだという説明を目にするたびに、現代医学がその病気をよく知らず、研究する意思もないのだと思わされる。ホルモンの影響を無視したいわけではないが、それを強調すればするほど、他の原因を探求するのは難しくなるからだ。あまりにも短絡的で雑な考えだと思う。
うつ病を例に考えてみよう。うつ病は女性に多い病気の代表例だ。興味深いことに、統計からは年齢や地域を問わず女性が男性よりもうつ病になりやすいことがわかる。2016年に保健福祉部が実施した精神疾患実態疫学調査によれば、大うつ病性障害(うつ病)の生涯有病率〔一生のうちに一度以上経験する確率〕は男性3.0%、女性6.9%であり、女性が男性よりも2倍以上高い。
この現象は韓国だけのものではない。世界保健機関(World Health Organization; WHO)が2017年に発刊した報告書「うつ病およびその他高頻度の精神疾患(Depression and Other Common Mental Disorders)」は、全世界で見ても男性(3.6%)より女性(5.1%)がうつ病になりやすいと結論づけている。ここでおのずと疑問が生まれる。女性はなぜ男性よりも憂うつなのだろうか。
