うつ病を患って人生のドン底にいるような時、果たして「愛」は救いになるのだろうか?

 ここでは、韓国のノンフィクション作家で、躁うつ病の当事者でもあるハ・ミナが、うつ病を患う20、30代の女性たちにインタビューした『このクソみたいな社会で“イカれる”賢い女たち』(明石書店)より一部を抜粋して紹介する。

   男性たちに酷い扱いを受けては捨てられ、何度も傷ついてきたジウン。悪い関係を続けてしまう理由を考えてみると、幼少期に父親から受けた仕打ちの記憶に行き着いたという。(全3回の2回目/続きを読む

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元カノとヨリを戻そうとした彼氏を引き留めた

 ソウルに住むジウンとは、かのじょの家でよく会っていた。行くたびにジウンはお茶と果物を出してくれるのを忘れなかった。その空間に足を踏み入れるたびに、ジウンがどれだけ誠実に、美しいものでその周囲を埋める人なのかを知ることができた。ジウンは何匹かの猫と男性の恋人と住んでいて、インタビューをしているとテーブルの下にいる猫が足にすり寄ってきた。わたしたちはうつ病がいつ始まったのかという質問から話を始めた。

「だいぶ前のことだからよくわからないけど、ゆっくり(進行して)で長かったです。最近難しいと思うのは、どこから始まったのかをはっきりさせることなんです。カウンセリングに行くと必ず幼少期のことから聞かれるじゃないですか。それが結構嫌でした。もちろんわたしの性格形成に影響はあったでしょう。でもその前に、最初のカレシと付き合ってたときはうつ病になるしかないような典型的な状況でした。

 なぜそんなことになったのか。遡ってみると父がいるんですよね。あるいはわたしという個人の気質かもしれませんが。だから何が原因なのかよくわからないけど、最近は最初のカレシが原因だと思ってます。うつ症状がすごく強かったし、それ以降にも影響があったから」

 ジウンが20代初めに付き合っていたのは、7歳上の軍人だった。男はジウンを「育てて」早く結婚するんだと言った。ジウンには大人に見えたし、面倒を見てくれるようで嬉しかった。