発達障害は病気ではなく特性
安田 似鳥さんは普通の人ができることができなくて、普通の人ができないことができますよね。
似鳥 ありがとうございます。これも人に自慢できることではないんですが、私はカンニングで一回も見つかったことがないんですよ。小学校のころから常習犯なので、誰にも分からないようなカンニングの方法を編み出していきました。台紙に輪ゴムをつけて袖の中に隠すんですが、小さな字で教科書を書き写したものを蛇腹に折ってそこに貼り、何とか落第を免れていました。短大を卒業後は四年制大学に編入試験で入りましたが、そこからもカンニング、カンニング、カンニングで……なんとか卒業することができたんです。
安田 決まったことを覚える気はないけど、創意工夫の力はある。それが経営に生きているとも言えますね。
似鳥 覚える気がないというか、覚えられないだけなんですよ。
それから整理整頓ができなくて、机の上はシッチャカメッチャカ。忘れ物もひどくて、眼鏡はこれまで100個くらい買ったかな。財布もよく落とすから、チェーンでズボンにつないでいるんです。
安田 ああ、それならなくさないですね。……いま聞いていて気づいたんですが、似鳥さん、私も同じかもしれない。しょっちゅう物はなくすし、整理整頓ができない。だからこそ、ドンキで「圧縮陳列」をやり始めたくらいで(笑)。
似鳥 なるほど。そうかもしれませんね。
安田 日常生活では、まるっきり無能力者なんです。
似鳥 そうそう。私も普通の会社に勤めて、普通の生活を送っていたら、絶対成功しなかった。
以前、とある企業の創業者とお会いしたんですが、その方も自分で発達障害だと言っていました。日本だけではなく世界を見ても、成功する経営者には、意外と発達障害の人が多いんですよ。発達障害は病気ではなくて、特性ですから。
安田 今日の対談テーマは、「運と経営」じゃなくて、「発達障害と経営」に変えた方が良いかもしれないですね(笑)
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この続きは、『圧勝の創業経営』(文春新書)に収録されています。
