「少ないものを薄く広げた」だけ? 吉野家まぜそばに漂う“残念感”
まず、三者の大きな違いは「全体のボリューム感」だ。二郎系:1280グラム、吉野家:420グラム、ファミリーマート:485グラムと、手に持った時点のずっしり感が全く違う。特に二郎系は突出している。
これには理由があって、二郎系は野菜などが同じ値段で野菜500グラム、刻みニンニク大さじ5杯まで頼めるからだ。しかし、野菜をほとんど撤去して汁を極力切った状態でも600グラム近くをキープしている。
ファミリーマートの千里眼監修メニューも、モヤシに人参、きゅうりなどが約40グラム入っている上に、直径8センチ、厚さ2ミリのチャーシューがあるため、見た目が充実している。これらと比較すると、吉野家のボリューム感の寂しさがうかがえる。
吉野家のまぜそばはネギひとつまみ(14グラム)とわずかな牛肉に天かす。少ない載せモノを薄く広げて、見た目だけでもカバーしようという計算が透けて見えなくもない。SNSで「野菜の存在感がない」「全体的なボリューム不足」といった評価が多いのは、こういった「少ない具を薄く乗せてしまった」ところに要因があるだろう。
批判はごもっとも? “醍醐味”を味わえないのが心残り
風味の出し方・タレの使い方も違う。ファミリーマートの商品は全体が絡むような、多めのタレを添付しているのに対して、吉野家は「香味つゆ」「ニンニクマシマシたれ」ともに分量が少ない。「上に少しかかる」程度のボリュームにとどまっている。
まぜそばの楽しみである「追い飯」を試した人をあまりSNSで見かけないのは、おそらく「タレが少なくて、丼底に残らないから」ではないか。
ニンニクも、二郎系とファミリーマートは刻みニンニクで香りとザクザク感を楽しめるのに対し、吉野家はタレだけだと風味不足で、すりおろしニンニク独特の塩辛さだけが残る。吉野家のキッチンで生ニンニクを取り扱うとカウンターまでにおうことになるため、これは「吉野家の限界」と言えるだろう。
麺の食感も違う。二郎系が幅5ミリ、太さ2ミリ程度のねじれがある平打ち麺で、ファミリーマートも幅3ミリ程度の平打ち麺に対して、吉野家の麺は2ミリ四方程度。
見た目はいたって普通、食感や香りもスーパーで販売している中細麺と変わらないように感じた。実際「麺がチープすぎる」「コンビニの方がおいしい」といった声もSNSで見られた。
まぜそばは平打ち麺にダシがどっしり絡むのがポイントだが、吉野家の麺はさして絡まず、あっさりツルツルと喉を通ってしまう。「食感が印象に残らない」というSNSでの声に納得できてしまう。
こうして見ると、吉野家のまぜそばは、二郎系やコンビニのものと比べてもボリューム不足かつ野菜不足、さらにタレとニンニク風味、麺の満足感も低い。SNS上の批判も「ごもっとも」といった出来である。



