酷評もやむなしの「吉野家まぜそば」 生き残るカギはどこにある?
今回気になった点を改善しようにも、平均で25~30坪しかない吉野家で、牛丼を優先しながらラーメンにひと手間加えるオペレーションは難しい。厨房・バックヤードを“マシマシ”するのも現実的ではないだろう。
「牛カルビ丼」「ヤンニョム唐揚げ丼」より高い767円という価格設定にも問題がある。せめて600円台前半なら、もっと好意的な反応だったのではないか。200円くらいを足してグレードアップできるなら二郎系に行くし、同じくらいの価格帯ならコンビニでもいいと感じる、中途半端さが気がかりではある。
ラーメンやつけ麺は値上がり基調で「1000円の壁」をゆうゆう超えるようになった中、今後も「税込767円」を維持、もしくは「牛皿・キムチ・納豆などと合わせて900~1000円内」のラインをキープできれば、どこかで人気が爆発する時は来るのかもしれない。
活路があるとすれば……
吉野家HDの年間売上(2025年2月期)は2049億円、営業利益は73億円。うち吉野家の売上は1378億円で約7割を占めている。
吉野家も牛丼依存から脱却を進めたいものの、から揚げ専門店「でいから」、カレー店「もう~とりこ」などは多店舗展開に移る気配がなく、全国的に飽和状態の牛丼店、丸亀製麺に押され続けているうどん店(「はなまるうどん」など)に次いで、「ラーメン」に勝負を賭けるしかない。
ただ、その行方を占う麺類第1号メニューは、全てにおいて中途半端な出来であり、今後の売上増につなげるには、もう少し改良の余地がありそうだ。従来と勝手がかなり異なるメニューなことから、オペレーションが各店とも混乱しているようで、まずは時間をかけて慣れる必要もある。
ここは割り切って、メインメニュー以外として「牛丼にプラスワン」で頼める商品としても展開してはどうだろう。
プラス100円か150円でみそ汁をお椀サイズの麺に変更できたり、ハーフ牛丼・ハーフ麺のお手頃なセットを頼めたり——。まぜそば単体としては不完全でも「小腹を満たすプラスワンの選択肢」としてなら、活路を開けるかもしれない。
吉野家の今後に話を戻すと「お湯の供給」「調理スペース」といった店舗設備の問題が解決しだい、通常のラーメン・中華そばや、系列店「キラメキノトリ」などのラーメンを提供する日も来る可能性は十分にある。
意外と、かつて吉野家が展開していた「びっくりラーメン一番」のオール電化・自動調理器などの省力キッチンを使用したオペレーションに狭い店舗でも牛丼とラーメンを同居させるヒントは隠されているかもしれない。
ともかく、吉野家史上初の麺メニューがどう変化していくか、推移を見守っていきたい。


